『心と体と木と暮らし』の思い
数年前のある日、化学物質過敏症の方が工房へ来られ「一切の化学物質を使わずに家具を作って欲しい。」
というご相談を受けました。
当時、そのような病気があることは知っていましたが、症状とか、どの程度のものに反応するとかいった
知識は全くなく、簡単に引き受けようと思っていました。
しかし、化学物質過敏症について調べたり、話しを聞くうちに、僕が考えている程甘いのもではなく、
とても微小な量の薬物にも反応するということを知りました。
僕が毎日使っている、4スター(F☆☆☆☆)という国の定める安全基準を満たしている木工ボンドにも、
反応しますし、もちろん市販の塗料は全くダメ。建材だけでなく、材料によっては、無垢のものでも
症状がでてしまうということを知り、僕にはそこまで責任を持つことは出来ないと考え、断念しました。
そして、そのことがずっと、心に引っかかっていました。
「あのお客様はどうしたんだろう?」
「どこかの家具屋さんで気に入った家具を作ってもらったんだろうか?」
「僕がもっと頑張って、作ってあげるべきだったんじゃないだろうか?」
・・・
悩んだあげく、そのような病気を持った方にも安心して住める家や、家具を提供出来るように勉強しよう。
それもただ単に、化学物質を使わなければ良い。というものではなく、僕が毎日作っている、『旅する木』
の家具と同じように、長く、愛着を持って使ってもらえるよう、デザインされた、心を癒し、豊かにしてく
れる家具を作ろう。と決心しました。
強度試験や、合板の代わりになるものの開発、家具の試作を繰り返し、やっと作品を制作できる目処が立ち、
『旅する木』の中に、一つのブランドとして、一切の化学物質を使わずに家具を作る『心と体と木と暮らし』
を立ち上げました。
もちろん、家具だけではなく、建築も含めて考えていかなければ意味のないことだと思っています。
今はまだ、建築については勉強している最中ですが、そう遠くない未来、”家”も含め、温もりのある木に
囲まれた、豊かで、優しくて、心癒される暮らしをご提案できるように、頑張ります!
化学物質過敏症という病気は、千差万別で、『心と体と木と暮らし』の提案するものが、全ての化学物質
過敏症の方に合うとは、残念ながら思えません。でも、一人でも多くの人が、ほんの少しでも辛い症状を
和らげることが出来るなら、それは意味のあることで、そのために、出来る精一杯の努力をしていこうと
思っています。
『心と体と木と暮らし』ブランドを立ち上げた2011年3月、日本で最大規模の大地震、東日本大震災が起こり、
今、テレビでは毎日その深刻な状況を放送しています。そして恐ろしい放射能汚染が世界的に大きな問題にな
っています。このような時に、『心と体と木と暮らし』というブランドを持つということには、とても意味の
あることだと思っています。
僕たちの日々の生活、少しだけ、昔に戻ってみませんか?
”ちょっとだけ不便”を楽しむ”心のゆとり”を考えてみませんか?
それって豊かなことだと思いませんか?