世にも奇妙な物語 | 札幌のオーダー家具・オーダーキッチンなら家具工房【旅する木】

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世にも奇妙な物語


宝くじを購入したこと、ありますか?

僕は宝くじも含めて、賭け事の運がない。勝ったことないです。
学生時代、友達に誘われて、パチンコ、競馬をやったことがあります。

「ビギナーズラックって言って、初めての時って、結構勝つもんなんだよ」という友達の口車に乗せられてやったのですが、全くダメでした。

ところが、世の中には、宝くじの一等が二度も当たった人がいるですって!
調べたら、一等が当たる確率って、2000万分の1なんですって。
これが二度当たるんだから、20,000,000分の1 × 20,000,000分の1=400,000,000,000,000分の1
えっと、0が14個だから…
400兆分の1!

わけわからないのですね。
もう天文学!
でも、実際にいるんです。そういう人が。

当たることを100%信じて、微塵も疑わなければ、一枚買っただけでも当たるって言いますよね。

 

そう。こんな出来事がありました。

 

先日東京のお客様のリノベーション中のマンションに家具の取り付けに行ってきました。
5.4メートルの大きなリビングボード。

前の日に到着するように運送会社に運んでもらっておいた家具を開梱すると、なんと、正面の引き出しが一枚、ガッツリ傷ついて凹んでいました。
現地ではとても修復できない傷だったので、工房に持ち帰って作り直すようにしたのですが、ここで大きな問題が…

5.4メートルのリビングボードの正面の引き出し前板と扉の木目が全て繋がっているんです。
だから、そのうちの一枚だけを交換ってできないんです。その一枚だけ、木目が変わってしまいますから。
5.4メートルの全ての引き出しの前板と扉を作り直さなくてはいけなんです。

全部作り直して、もう一度東京に取り付けに行く費用を計算すると、55万円くらい。

運送会社と補償のことを話し合うのですが、運送会社が壊したのはあくまで一枚なので、全額補償することはできないと。交通費というのも補償の対象外だと。

大損害。めちゃくちゃ赤字です。
運送会社ととことん対決するという手もあるのですが、家具の運送を引き受けてくれる運送会社って少ないんです。揉めて「今後、旅する木さんとは取引きをやめます」と言われてしまっては困ってしまうんですね。

もう一つ、打つ手があります。

『補修屋さん』という職業がありまして。
以前、お客様が家具の天板に何か硬いものを思いっきりぶつけて、1センチくらい凹ませてしまったんですね。
その時、補修屋さんに補修してもらったんです。
凹んだ部分に色合わせをしたパテを埋めて、木目を書き込んでいく。

修復した天板を見ると、どこが凹んでいた場所か全くわからない。
すごい技術なんです。

今回も補修屋さんに頼めば、全くわからないように直せます。
幸い、リノベーションの工事中での出来事なので、お客様は傷ついた箇所を見ていない。
傷ついた箇所を知っている僕でさえ、どこに傷があったがわからないくらいの補修の技術なので、傷があることを知らないお客様が気が付くことは、まず考えられない。
それだったら修理費用は1万円程度で済みます。
引き出し一枚の取り付けだったら一人で大丈夫なので、交通費入れても4,5万円。
運送会社の補償で賄える。

 

でも…

 

昨今の大企業の不祥事って、結局、問題が発生した時の一番最初の対応を間違えたことで、事が大きくなってしまうんだと常々思っています。
誰だって、どんな会社だって、間違いは起こる。
その時、一番最初にどうするか?
そこが全てだと思っています。

 

全て作り直すのか、わからないレベルの補修にするのか。
作り直すとしたら、数十万円の赤字。補修なら運送会社の補償内。

心の中で葛藤します。
自分達が加工中に傷つけてしまったのなら、そこは迷いなく作り直します。
でも
「今回、自分達には非がない出来事。その出来事に対して、数十万円の赤字でも作り直すのか?」
「お客様が全く気がつかないレベルで直せるんだから、補修でいいんじゃないか?それはお客様を裏切る行為ではないのではないか?」

みなさんが僕の立場だったら、どうしますか?

今の僕にはこの判断はできませんでした。
旅する木のような小さな工房にとって、数十万円の赤字って、大きな痛手なので。
しかもその原因が自分達ではない。

 

迷って決められない時、どうすればいいんでしょうね?
僕は、正直に伝えて、判断を委ねる。

傷ついた箇所を写真撮って、メールでお客様に見せて、二つの対応方法を詳しく説明して、お客様の希望を伺いました。

「新車を購入したのに、納車途中にぶつけて傷ついて、そこを修理したものを納車してもらうというのは、納得できない」と。

僕の心は決まりました。
はみ出しの数十万円は全てうちで持つ。
そして元を取る!!!

 

『お金はなんの対価か?』

『お客様の信頼と喜び、そして自分達の喜びに対する対価』だと思っています。

この判断は、お客様の信頼を得る判断か?
Yes!
あとは自分達の喜びで埋め合わせすれば良い。
スタッフ全員で一泊で東京に取り付けに行こう!
全力で夕方の早い時間までに取り付けを終えて、美味しいお酒を飲もう。
次の日は東京見物と、美味しいものを食べよう!
とにかくめちゃくちゃ楽しむ!
これで元は取れる!

 

すぐにスタッフに作り直しを指示して、材料(突板)を発注する準備をしました。
この作り直しで6枚の突板が必要。
そこで何枚か材料が残っていないかを確認。
旅する木はオーダーなので、突板はその作品ごと、多くても1枚程度しか余らない分を発注して作ってもらっているんですね。
しかも、今回、タモという樹種で、旅する木ではほとんど使うことがない樹種なので、期待できない。

ところが…

ずっと材料の発注は僕がやっていたのですが、ここ最近は工場長の工藤がやっています。
まだまだ未熟なのと、心配性な性格なので、多めに発注していたんですね。
なんと5枚も余っていました。

でも、木目が繋がる指示をして作ってもらった突板じゃないので、普通だったら木目が繋がるはずがない。
「繋がっていてくれ!」
祈るような気持ちで並べたところ、なんと、木目が繋がる指示をして作ってもらった突板よりも、木目が繋がっている。
これ、かなりの奇跡なんです。

ただ…
一枚足りない。

スタッフみんなで、材料置き場の全ての突板を一枚一枚、何度も確認したんですけど、やっぱりない。
仕方なく、突板屋さんに連絡して、木目が揃う突板を発注しました。

リノベーション工事のスケジュールの中で、家具の取り付けは一番最後なんです。
引き渡し日は既に決まっている。
とにかく時間がない。
突板屋さんには、最優先で作ってもらわなきゃいけない。
でも、突板屋さんだって、既に予定が入っているだろう。
僕らだって、やり直している時間なんて本当はない。
どうしよう…

 

気分を変えて、犬の散歩をして、夕ご飯を食べている最中、ずっと心の中に違和感を感じていました。
感じている違和感はなんなのかというと…

 

自分に非がない出来事が、降って湧くということは、きっと今の俺にとって、必要なことなんだろう。と、正面から受け止めることができている。

この出来事で、運送会社を恨んだり、怒りの感情は湧いていない。

作り直しを選択したお客様に対しても、負の感情は湧いていない。むしろ、堂々と清々しい判断を促してくれたことに感謝の思いさえ感じている。

そして、スタッフと一泊で取り付け兼、社員旅行ができることに、喜びを感じている。

 

ということは、今俺は、この出来事の解決への流れのど真ん中にいる。
今までの経験から、流れのど真ん中にいる時って、パズルの最終段階のように、手にするパーツがことごとく、ピタッピタッとはまっていくはずなんだけどなぁ。

6枚必要な突板が5枚しかない。どうせ1枚足りないなら、5枚が工房にある必要がないし、その、たまたまあった5枚の木目が奇跡的に繋がっているという必要もない。
1枚足りないなら、どっちみち木目が繋がる突板を6枚、注文しなきゃならないので。

僕が感じていた違和感とは、奇跡的に木目が繋がっている突板が5枚、工房に残っていたことなんです。
流れのど真ん中にいるとしたら、なぜピッタリの6枚じゃなかったのか?

 

その時、何か直感のような、光のようなものが、頭の中を駆け抜けました。
「ある!もう1枚、6枚目の突板がある!」

食べるのを途中でやめて、さっき探した材料置き場に行きました。
そしてパッと手に取った一枚を引き抜くと、それはまさに6枚目のタモの突板でした。

ビックリしたというよりも、感じたことは
「ああ、やっぱり」

ここはスタッフと一枚一枚、全部の突板を確認したはずの場所。
あの時には、確かに、ここにこのタモの突板はなかったんです。

 

3000年前にお釈迦様が悟った『色即是空 空即是色』の世界を、ミクロの世界を探求する量子物理学者たちが証明しつつあるらしい。

僕らが現実と感じている世界は、実は数多とある可能性(波動的現実)の中から、自分が観測した(望んだ)可能性を体現している仮想現実なんだそう。

数多とある可能性(波動的現実)というのは、いわゆる、パラレルワールドと呼ばれているもの。

 

僕は思っています。
僕とスタッフが探した時、あの6枚目のタモの突板はチェリーだったんじゃないか。(チェリーの突板はたくさんあった)
それが、僕が、「6枚目のタモの突板がある!」と100%信じた(観測した)ことで、チェリーだった世界から、タモの世界に僕が移動したんじゃないだろうかっと。

 

信じるか信じないかは、あなた次第です(笑)

 

一つ、確実なことは…

先日、東京に作り直した家具を取り付けに、スタッフみんなで行ってきました。
5.4メートル、綺麗に木目が繋がったリビングボードに大満足。


↑↑↑ 5.4メートルの家具の大きさをどう伝えるか?っと若者たちが考えた答え(笑)

 

 

そしてその晩は、美味しい居酒屋を見つけて食べて飲んで、シメにおでんを食べて、次の日は早朝、築地で食べ歩いて、浅草でも食べ歩いて、本当に楽しい時間を過ごしました。

 

そう。一つ、確実なこと。

完全に元は取った!