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チューリップにも心があるんだな。
6月に入ったのに、北海道は寒い日が続いています。
いまだに朝はストーブを焚く日もある。
それでも工房の周りの風景は、この季節に馴染んだ変化をしている。
田植えが終わって、まだまだひ弱で小さく細い稲が風に揺れている。
そして工房の小学校の空き地に毎年、色とりどりのチューリップが咲きます。
咲くことは知ってたんだけど、そんなに花に興味のない僕は、毎年特に気にも留めず、
「ああ、チューリップが咲いてる。綺麗だなぁ。」と遠くから眺める程度だったんですね。
この時期、毎朝、明るくなる4時半くらいに犬に起こされて、散歩に行くのですが、一周して工房に戻って来た時、道路からチューリップが見えたので、ふと近づいて見てみたんです。
そしたら、かたまって咲いているチューリップの群れからちょっと離れたところに、ちょっと小さなピンクのチューリップを見つけました。
あまりに鮮やかで美しいピンク色なのと、周りのチューリップよりちょっと小柄なのと、そして、群れずにちょっと離れたところで一輪だけポツンといるその姿に心惹かれて、毎朝犬の散歩を終えた後、そのチューリップのところに行って、
「気持ちの良い朝だね〜。今日も綺麗に咲いてくれててありがとう。」
なんて声をかけては、隣に立っている白樺に寄りかかって、好きな音楽を一曲聞いて、工房に戻ります。
そんな風にして工房に戻るのは5時半くらい。
その後、手動のコーヒーミルでコーヒー豆を挽いて、コーヒーを入れて、校庭の緑を眺めながら、気づいたことをメモったり、本を読む。
これが最近の僕の1日の始まり。
こんなことを続けていると、明らかにチューリップに変化が。
周りのチューリップは、日に日に花が開いていって、少しずつ色がくすんでいって、やがて、ひとひらづつ、花びらが落ちていくのに、このピンクのチューリップだけは、相変わらず鮮やかに、美しく、凛として咲いているんです。
なんか心が通じているようで嬉しくなって、毎朝このチューリップのところに行くのが楽しみになりました。
気持ちの乗らない朝は、
「なんか今日は気分がイマイチなんだよ。こんなんじゃだめだよね。気持ちを切り替えよう!」
なんて話しかけると、心がスーッと。落ち着くんですよね。
心の振り子が真ん中で穏やかに静止する感じ。
犬の散歩をしながら、遠くから工房の空き地の中の緑の草の中に、ポツンとピンクの点を見つけると、なんか心が踊るというか…
ヤバ!俺、このチューリップに恋してる!(笑)
なんて年甲斐もない自分に笑ってしまいます。
夜に激しい雨の降った朝、心配しながら見にいって、ピンクの花を見つけたら、
「ありがとう〜!頑張ったね〜。」なんて言ってそっと撫でたくなる。
例えばこのチューリップが人間くらいの身長で、もっと頑丈だったら、思いきりハグしてるかも(笑)
↑
それは怖い(笑)。
ネットで調べたら、チューリップは13〜14回、開いて閉じてを繰り返して散るんだそう。
最初に見つけた日から数えてもう、20日が経つ。
”気づいたこと日記” を読み返してみると、
5月25日
あのチューリップが今朝も可愛らしく咲いてくれていた。
「ありがとね」と声をかけていると、白樺に止まっていた二匹のカラスが、カー、カーと鳴いた。
「折角良い気持ちでいるんだから、空気読めよ!」
チューリップを愛でる一方で、うるさいカラスにイラつく。
本当の俺はどっちだ?
後者だな。
5月28日
今日もあのチューリップが綺麗に咲いていてくれて嬉しい。他のチューリップも綺麗だけど、このチューリップは特別可愛い。これはエコひいきってやつなのか?俺は教師にはなれないと思った。ならなくて良かった。
5月31日
今日もあのチューリップが可愛いく咲いてくれている。もう他のチューリップはいなくなってしまった。他のチューリップももう少し可愛がればよかったかな。
6月3日
花はだいぶ開きっぱなしになって来た。それでも相変わらず美しくて、可愛いらしい。
6月5日
ピンクの花びら1枚が落ちていた。悲しい気持ちもあったけど、ある方に目を向けよう。
数えたら可愛いピンクの花びらが5枚、残っていた。
チューリップの花びらは6枚だと初めて知った。
6月7日
昨夜からの雨で、2枚の花びらが落ちた。それでも頑張って咲いてくれている。
「ありがとう。俺は大丈夫だよ。ひとりぼっちは淋しいよね。もう頑張らなくてもいいんだよ。」
と声をかけた。
6月8日
ピンクの花びらが全て、草の上に落ちていた。おかしいなあ。悲しくて泣いた。
あのチューリップに感謝できる心があった。それを知れた。
冒頭で言ったように、僕はあまり花に興味ないんですよね。
頂いた花も、水やりの習慣がないので、ついつい忘れて、枯らしてしまったこともある。
もしかしたら、花を愛でたのは、生まれて初めてだったかも知れない。
6月9日
今日もあのチューリップのところに行った。
花びらが無くなってしまうと、雑草に紛れてしまって、すぐにはわからなかったけど、落ちている少し色あせたピンクの花びらを見つけた。
拾って手に乗せてみた。
白樺に、カラスが二羽止まっていて、カー、カーと鳴いた。
「君たちも悲しでいるのかい?」と声をかけた。
「人間なんて勝手なものだな。その時の気持ちで、勝手に解釈を変えやがる。」
きっとカラスはそう思ってるだろう。
一番形の良い花びらを一枚取って、残りは茎の根元に置いた。
この花びらは、日記のしおりにしようと思った。
来年も咲いてくれるかな?
来年も、可愛いピンクかな?
ネットで調べてみると、チューリップはその年によって色が変わる場合があるんだそう。
そして驚いたことがもう一つ。
チューリップの花びらは3枚なんですって。残りの3枚はガクといって、花びらを守る役割なんですって。
今朝も散歩の後、チューリップのところに行って、声をかけました。
「来年も咲いてくれるのを楽しみにしているね。その時、君がどんな色でも僕は大丈夫だよ。
それにしても、ボディーガードが守るべきもの級に美しかったら、ボディーガードを守るボディーガードが必要だね。ガクを守るガクだから、ガクガクだね。」
白樺の上で二匹のカラスがカー、カーと鳴いた。