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ノンノ、元気になって、また散歩をしよう
ちょっと遅れましたが、新年、あけましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願い致します。
新年の挨拶がちょっと遅れたのには、ある事情がありまして…
穏やかなお正月を過ごして、いよいよ仕事始めの6日の早朝、リビングでガタガタガタ!という音で目覚めました。
何かあったと思って、リビングに行くと、ノンノ(北海道犬17歳♀)が、ハアハアと苦しそうな呼吸をしながら、高速寝返りを繰り返していました。
ビックリしてノンノを抱き抱えようとしても、払い除けるように寝返りを繰り返します。
救急でやっている病院に連れていくと、脳梗塞だということで、そのまま入院しました。
二日後に病院に行くと、繰り返していた寝返りは収まっていましたが、グッタリと横になったまま動かないノンノがいました。相変わらず呼吸は苦しそう。
家に連れて帰ってきたのですが、脳の障害で、左半身が動かないのと、平衡感覚を失っていて、首を傾げた状態で、横になったまま自分では動けない。
自分で水も飲めなければ、ご飯も食べられない。もちろんオシッコもウンチもできない。
いきなり24時間介護をすることになってしまいました。
苦しそうに、ずっとハアハアと荒い呼吸をして、ダランとベロを出しているので、1時間おきに水を飲ませてあげて、するかしないかわからないけど、2時間毎にオシッコさせに外に連れて行き、たまに苦しそうに悲鳴のような声をあげるので、抱きしめて撫でてあげて、このまま筋肉が硬直してしまったら、それこそ二度と歩けなくなるので、マッサージと硬くなった左側の手足の筋肉を動かしてあげて、夜はノンノの隣に横になって、昼間と同じことをする。という感じ。
奇跡なのか、そういうものなのか解りませんが、一昨日から、寝たきりだったノンノが立ち上がり、フラフラしながらも、歩き始めました。
左半身が不自由なので、数歩歩いてはコケながら、脳の障害のせいだと思うのですが、首を左に傾げて、左回りにグルグルと回っています。真っ直ぐは歩けないんですね。
歩けるようになると、余計に危なくて、目を離すと、自宅の椅子の隙間に顔を突っ込んで、そのままもっと進もうとしてしまうんです。
毎朝、工房に行って、スタッフに指示をして、その後は自宅でノンノの介護をしながら、できるPC仕事をしています。
なんでこんなことになったんだろう?
もう17歳ですからね。
いつ何時、何があっても不思議ではないのですけど
さあ、今日から仕事始めだ!っという日の朝に。
たまたまと言えば、たまたまなのかも知れませんが、ちょっと思い当たる節がありまして…
二年くらい前から、何かと僕は公言していた言葉があるんです。
「僕も50代になって、体力が無くなって来て、重いものも持てなくなって来てるから、三年くらいを目処に、家具やキッチンについては、設計、製作の全てを若いスタッフに任せて、僕や花輪くんのジジイ組は、技術勝負の木の車椅子の方に特化して、やっていきたいんですよね」っと。
そして、今振り返ればの話なのですが、昨年の年末に、しきりにスタッフに言ってたこと。
「もう俺も55歳だから、いつ何時、何かあって、いなくなるか解らないよ。もしそうなった時、君達はどうする?俺がいなくなった時、自分たちで旅する木をやってかれる?
はい。旅する木は解散!っとなって他の家具屋さんに就職して、今のように楽しくやってけるならいいんだけど、なかなか旅する木の雰囲気の会社ってないから、その時、自分たちで旅する木を続ければよかった。って思っても遅いよ。今の仕事の一つ一つ、寸法一つ一つに至るまで、なぜ?と自分で考える癖をつけておいた方がいいよ。」っと。
「3年後、家具、キッチンは若者だけでも回せるように…」と言っていた今年がちょうど3年目なんですよね。
1月6日、仕事始めの朝、倒れるのは、もしかしたら僕だったのかも知れません。
それをノンノが身代わりになってくれたような気がするのです。
ノンノを介護することになって、僕はほとんど会社にいることができなくなって、強制的に僕は昨年までのように、仕事をすることができなくなりました。
ノンノが入院している間に、スタッフみんなで年初めのミーティングをした時、スタッフに伝えました。
「これは旅する木にとって、すごいピンチだけど、逆に君たちが成長するには、すごいチャンス。ノンノが身を呈して、この機会を作ってくれた。この一年で、俺がいなくても大丈夫なくらい君たちが成長してくれたら、その後の旅する木は、君たちの成長と同じように、成長、発展すると思う。
旅する木の今後は、今年の君たちの成長にかかっていると思う。各自、自分がどうしたいか考えて、判断、勉強、行動して欲しい」っと。
もちろん、このことで一番学んで、一番成長しなければならないのは、僕自身で、僕の心の成長が、僕の今後の人生と、旅する木のこれからに一番影響があることは解っている上での話なんですけどね。
ノンノは生まれてすぐにやって来て、まだ僕が1人で旅する木をやっていた頃から毎日、僕と一緒に工房に出勤して来たので、工房が大好きなんです。
いつも朝8時くらいになるとソワソワして、僕に「早く早く!早く工房行こう!」と吠えて催促してくるんです。
週末も年末年始も関係ないので、休みの日なんてうるさくて。
「今日は休みだから、工房行かないんだって!」って。
退院して家に戻って来た次の日、グッタリ横になったノンノを工房に連れて行って、ノンノ目線の低い台車に毛布を敷いて、ノンノを寝かせて作業場に連れて行きました。
目の焦点は合っていないけど、工房だって解ったんでしょうね。苦しそうなハアハアという呼吸から、穏やかで静かな呼吸になって、なんだか嬉しそうでした。
7年前、子宮の病気で余命3日と言われてからの奇跡の復活をした後、ノンノに相棒を作ってあげようと思って、まる(黒柴)を連れて来たのですが、これが大失敗(笑)。
相性が悪いのなんのって。
タイミングも悪かったんですよね。
僕が勝手に、相棒を作ってあげて、犬同志で遊んだら、元気が出ていいかも?なんて思って、まるを連れて来たんだけど、病み上がりのノンノは、きっと自分だけに愛情をたっぷり注いで欲しかったんでしょうね。ノンノが子犬だったまるをかなりいじめたので、まるは自分を守るために、噛む犬になってしまったんですね。人にも。
大きくなったまるとノンノの本気の喧嘩は、もう壮絶で、どっちかが死ぬまで止まらないんじゃないかと思うほど。僕も血だらけになりながら、二匹の間に割って入って、どうにかこうにか止めるということがしょっちゅうでした。
そんなんで、家族も含め、僕しかまるに触れない犬になってしまいました。
そうなると、まるが可哀想で、僕は噛まれるのを覚悟で、できるだけまるを撫でたり、スキンシップを取るようにしたんです。
お陰で僕の手や足はまるの噛み傷だらけ(笑)。
やっと最近、僕には平気になりましたが、自分で言うのもなんですが、僕じゃなかったら、まるは手に負えなくて、とっくに保健所行きだったと思います。
ちなみに、もし僕が病気か何かになって、余命宣告されたら、僕が逝く前に、僕の手でまるを…っと、真剣に考えています。
僕のことが誰よりも一番好きだったノンノですが、まるが来てからは、僕をまるに譲るような感じで、僕が「おいで」と両手を広げても、まるを気にする素振りを見せて、まるがいないことと確認して近づいてくる感じで、遠慮していました。
その傾向は年を取ると余計に。大きな尻尾だけフリフリして、「ワオーン」って吠えるけど、近くには来ない。
「大丈夫だよ」と言って、僕から近づいて抱きしめると、フーっとため息をついて、喜んでいました。
そんなノンノが、こんな風になって、今僕は、24時間ほぼずっとノンノの隣にいます。遅いですけどね。
でも、1月6日の朝、ノンノがそのまま死んでしまわなくて、こうやって最後に僕が24時間、ノンノを介護して、一緒にいられる時間を作ってくれたのは、本当に感謝です。
やっとまるのことを気にせず、僕にたっぷり甘えています。
左半身の自由が効かないので、真っ直ぐ歩こうとしても、どうしても左回りになってしまうノンノに、3メートルくらい離れて、左に傾いている顔の、見えている方の左目(もともとノンノは右目が見えない)の視界に入ってあげて、「おいで!ノンノ!」と両手を広げて待っていると、たった3メートルなのに、ゆっくりと時間をかけて、つい左に向いてしまうのをなんとか堪えて、一歩一歩ヨタヨタしながら歩いて来て、僕の手前で僕の胸に倒れ込んでくる。20キロの重いノンノの体重を感じながら抱き締めると、僕は「ごめんね」という気持ちと、そして幸福感に包まれるのです。
ノンノは、自分のためじゃなく、僕のためにこの時間を作ってくれたんだっと。
そして、信じられないような新しい発見もあるんです。
まるがノンノのことが心配で心配で、ずっと横にいるんです。一週間、ろくにご飯も食べずに。それはそれで困っているのですが…
まるを散歩に連れ出しても、家から20メートルも離れたら、帰りたくて帰りたくて、家の方に僕を引っ張るんです。家に戻ると走ってノンノの横に行って、ノンノの顔を舐めて横に座る。
夜もノンノのすぐ近くで寝るています。
ノンノを挟んで、両側に僕とまるが寝ています。
ノンノが倒れる前までは、半径5メートルにノンノが近づいたら、唸って吠えて威嚇していて、それでも近づこうものなら、飛びかかる勢いだったのに。
こんな風に、ノンノとまるが同じポーズで向かい合って寝ている姿を見ると、つい頬が緩んで、なんか、ノンノが全てを優しさで包み込んでいるみたいで、感謝の気持ちで胸がいっぱいになります。
寝ているノンノを撫でながら、
「ノンノは本当にすごいね。みんなを成長させてくれているよ」
と声をかける。
ノンノが作ってくれたこの時間を、僕はできるだけノンノのために費やしたいと思っています。
そしてそれが一見、遠回りだったり、関係ないように感じるかも知れないけど、いずれ大きく旅する木のためになるのだと思っています。
今回も、長いブログにお付き合い頂き、ありがとうございます。
今年も旅する木と、そしてノンノを応援してください。
今年は旅する木創業20周年です。
きっと今後、旅する木がしっかりと根を張って、大きく たくましい木になるために、ノンノがこうして命を張ってくれているんだと思います。
ありがとう、ノンノ。
元気になって、また朝の散歩をしよう。