『僕は運がいい』を待ってます | 札幌のオーダー家具・オーダーキッチンなら家具工房【旅する木】

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『僕は運がいい』を待ってます

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【旅する木 採用試験内容】

今日から3日以内に

『僕は運がいいです!』と宣言のリアクションをください。

それが僕の採用通知です

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SNSでの検索能力って、すごいですね。
いったいどうなっているんでしょうか?

InstagramにしてもFacebookにしても、
『◯◯はあなたの知り合いかも知れません』
という表示とともに、めちゃくちゃ懐かしい人の名前が出てきます。

先日、Instagramに、ある人の名前が出てきて、ビックリしました。
その人の投稿を覗きに行くと、センスの良い木工クラフトが写っていました。

思わず、
「あーそうだったんだ。よかったぁ〜」
と独り言が口から出てしまいました。

 

遡ること、今から14年前

新潟のデザイン系の専門学校在学中の一人の若者から、旅する木への就職希望の連絡が来ました。

忙しくなって来て、一人では手が回らなくなって困っていた時期だったのですが、そもそも創業する時から、人を雇うなんていうことを想定していなかったので、その決心がつかず、おまけに、もし雇うとして、彼が僕の望んでいる人かなんて、いっときの面接なんかでは判らない。
そこで僕は、彼の”運の強さ”に委ねようと思ったんです。

そこで、彼に宛てたブログを書いたんですね。
その時のブログがこれ

2010/11/19 ”「僕は運が良いです!」を待ってます”

僕が一緒に働くとしたら、こんな人を望むという条件を書いたブログの最後に、こんな文句を載せました

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前文省略

 

僕は”運が良い”ということをとても大事な要素だと思っています。
未経験者ということで、木工に役立つものを、今のところ君は持っていない。
そこで、僕は君を試します。”運”を持っているかどうか。

君がこのブログを読んでいるか、僕は知りません。もし読んでいるとして、毎日覗いているのか、たまになのか。
毎日更新している訳ではないので、読んでいるとしても何日に一度だと思います。

*旅する木 試験内容

今日から3日以内に”僕は運がいいです!”と宣言のリアクションをください。

それが僕の採用通知です。

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リアクションがないまま、期限の3日が過ぎました。
そして4日目の日中、電話が鳴りました。彼からでした。
「…今ブログ、見ました」

多分、期限の3日を過ぎていたので、「僕は運がいいです!」なんて言いにくかったんでしょうね。
1日遅れだったし、「僕は運がいいです!」宣言もなかったけれど、彼を採用することにしました。

 

次の年の春、新潟からやって来ました。

素直で真面目で、好青年だったのですが、初めてのスタッフと、どういう距離感で接したらよいのか解らなかったり、予想はしていたものの、全くの未経験者とのマンツーマンは、想定していたより足手まといでしかなく、彼よりも、僕がどうにかなりそうで、結局、一ヶ月ちょっとで辞めてもらいました。

未経験者の若者が、家具作りに向いているかどうかなんて、一ヶ月でわかるはずが無いんです。ただ、すごく時間がかかると判断しました。
今だったら、ゆっくり育ってくれればいい。という余裕があるのですが、その当時の僕に、そんな心の余裕と、金銭的な余裕もなかったので、悩んで悩んで悩んだ挙句、苦渋の決断をしました。

後にも先にも、僕がスタッフを辞めさせたのは、彼以外にいません。

 

人としては、とても好感が持てる、好きなタイプの若者だったのですが、旅する木のことを考えた時、自分がこんなにも非情になれるのかと、自分が怖くなりました。

その時書いたブログがあるので、読んでみて下さい。

2011/5/23 ”悲しいほど綺麗な月だった”

今でも透き通るような綺麗な月を見ると、たまに思い出して心がチクッとします。

 

あの後、新潟に帰って、何をしていたかなんて、全く知らなかったし、連絡も取ってなかったのですが、そんな彼の名前がInstagramで突然表示されたんです。

そしてこっそり覗いてみると、なんと、木工クラフトで独立して、新潟に自分の工房を持ったこと、そして奥さんと一緒にやっていることなど、楽しそうな投稿をしていました。

なんだか嬉しかったですね。
なにより、あの後、彼が木工を続けていたことが。

彼の後、何人もの若者が旅する木にやって来ては去っていきましたが、いつもどの若者に対しても心残りに思うのは、木工の楽しさが伝わらなかったということ。
でも、唯一彼だけは、僕が木工の楽しさを奪ってしまったっという思いがありました。

胸の奥に刺さっていたトゲが、スッと取れたような感じがしました。

 

すぐにコメントをして、当時のことを謝ろうかと思ったのですが、今、楽しそうにやっているんだったら、それでいいのかな?と思い、そのままにしています。

 

無限に広がる人生の可能性の中で、何が運が良くて、何が運が悪いかなんて、結局のところ、わからないものですね。

昔のブログを読み返すと、こんな言葉で締めくくっていました。

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彼が工房に来なくなってからも、たまに夕飯を食べに行ったり、近くの温泉に行ったりしました。

ここ、旅する木で過ごした約2ヶ月。彼には何度も怒鳴りつけて、そして何度も何度も繰り返して伝えた事があります。
多分、すぐには解らないと思いますが、何年後か、何十年後かに、「そういうことだったのか。」 と気付いてくれる日が来たら、その時、ここにいた日々が意味を持つのではないかと期待しています。

頑張って。そして、ありがとう。

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あの頃、あんなに気にしていた”運”ですが、今はちょっと捉え方が違う。
運が良いも、運が悪いも、全部ひっくるめて、自分の人生を信頼する。

「ほらね、やっぱりね。大丈夫だったでしょ?」

そう思う日が必ず来る。

 

14年前、一方的に僕が彼に何かを伝えたと思っていたけれど、彼は僕に、言葉ではなく、とても大事なことを伝えてくれていたんだと、今さらながら気がつきました。

最後のこの言葉、そっくりそのまま、彼が僕に伝えたい言葉だったのだっと。

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多分、すぐには解らないと思いますが、何年後か、何十年後かに、「そういうことだったのか。」 と気付いてくれる日が来たら、その時、ここにいた日々が意味を持つのではないかと期待しています。

頑張って。そして、ありがとう。

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最後に彼、坂爪哲也くんのInstagramのページをリンクします。
ぜひ、覗いてみてください。

惜しい人材を逃したかも…(笑)

https://www.instagram.com/ke_shiki_/