一番「嬉しい」瞬間ってどんな時? | 札幌のオーダー家具・オーダーキッチンなら家具工房【旅する木】

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一番「嬉しい」瞬間ってどんな時?

年の瀬ですね。

11月に娘に赤ちゃんが産まれて、おじいちゃんになりました。
それがきっかけで、離れて暮らしていた息子が工房に来て、ほぼほぼ24時間、二人で一緒に暮らしていました。

仕事が終わった後、「トランプやろう!」「花札やろう!」「温泉行こう!」などなど誘われて、「今日はブログを書くからダメダメ。」っと断るのですが、なんだかんだ息子の戦略に乗せられて、ブログを書くのを疎かにしていました。
昨日、息子が戻って行って一人になったので、のんびりと甘酒を飲みながら、ブログを書き始めています。

さて、いざPCに向かってみると、何書こうかな?
この2ヶ月の間に、書きたいことがいくつかあったんですよね。
その一つ、なんということではないんですけど、僕にとっては嬉しかったことを、今年最後のブログとして、書きますね。

 

人生で、「嬉しい!」と思う瞬間はなんですか?

欲しいものが手に入った時、
夢が叶った時、
美味しいものを食べた時、
などなど、色々とあるかと思います。
一番「嬉しい」瞬間というのは、人と心が繋がったと感じた瞬間じゃないですかね?

もちろん、心が繋がりたいと願っている相手と繋がった時は、最高に嬉しいものなのですが、そうじゃなくて、たまたますれ違っただけの人と、心が繋がったと思う瞬間も、嬉しいものです。

 

ちょっと前になりますが電車の中で、東野圭吾の『希望の糸』を読んでいた時、そうでもないところなのですが、なんか心にハマってしまって、ボロボロと泣いてしまって、鼻水も止まらなくて、挙げ句の果てに、ティッシュもハンカチも持ってなくて、困っていたら、隣に座っていた人が、「よかったらどうぞ。」っとティッシュをくれました。
「すみません。」と受け取った時、「私もその本で泣きました。」っと。
なんか、とても嬉しかったですね。

 

この前、ある方からメールが届きました。
「30年前に買った椅子4脚を今も使っているのですが、この度、息子にお嫁さんが来るので、椅子を一脚増やそうと思っています。できれば同じ椅子がいいと思って、購入したメーカーに問い合わせたのですが、もう廃盤になっていて、製作はできないと断られました。そちらで同じ椅子を作れませんでしょうか?」
という内容。そして、今使っている椅子の写真が添付してありました。

椅子を30年大事に使っているって凄いですよね。
家具作りをしている僕は、自分の作ったものでなくても、こうやって家具を大事に使ってくれている人を、ありがたいなあ。と思います。

旅する木は、他の家具屋さんと同じもの、似たものを作ることはないんですね。でも、廃盤になっていて、もうその会社が作らないこと、そして上記のような理由があったとしたら、それは作ってあげたい。

ただ、旅する木の椅子ですら、一脚だけ作るって、それは赤字なんです。
しかも新規の椅子一脚となると、それはとてもとても。

それでその方に、返信しました。
「拝見した椅子は、スポークが一本一本角度が違います。そうすると、スポーク一本ごとに治具といって、角度を出すための型を作らなければなりません。
この椅子は元々他社メーカーの椅子で、治具を作ったからといって、今後同じ椅子を製作することはありません。
そうなると、この椅子を作るための治具を作る時間も全て、金額に含めることになってしまいます。購入した価格よりずっと高くなります。おそらく何倍もの金額になってしまうと思いますが、作ることはできると思います。ただ、簡単な椅子ではありません。
もしそれでも良ければ、見積もりをしますので、いろんな角度から椅子の写真を撮って、添付してください。」と。

すると、
「関西に住んでいるので、実は関西のいろんな家具屋さんに連絡しました。でも、どの家具屋さんも門前払いのように、製作できません。の一言でした。
製作できると言って下さったのは、旅する木さんが初めてです。
出せる金額でしたら、製作をお願いしたいので、お見積もりをお願いします。」
と返事がきました。

添付された写真を見たのですが、簡単ではない。
治具だけでも8〜10個くらいは作らなければならない。

その旨を説明し、見積もり金額を伝えて、
「とても現実的な金額ではないです。そして失礼な言い方になりますが、この椅子は、それほどまでのお金をかけて作るだけの価値のある椅子かというと、私としては、そうではないと思います。30年前は量産されていたものです。すみません。」

と伝え、もしかしたらネットで中古のものが売っていたり、オークションで売られていたりするかも知れないと思い、調べました。
でも、残念ながら、見つけることはできませんでした。

そのことも伝えて、結論は、
「似た椅子はあります。」
と伝え、いくつか似た椅子のHPを添付しました。

返信はやはり
「出せる金額ではありませんでした。これで諦めることができます。似たような椅子を探そうと思います。」
というものでした。

「これで諦めることができます。」という言葉がなんだか嬉しくなりました。
もしかしたら傷つけることになるかも知れないけど、包み隠さず、オブラードに包まずに伝えることで、その人の気持ちを押すことができたのかなっと。
そのことが嬉しかったんですね。

休憩のとき、スタッフにこのことを伝えると、
「須田さん、普通そこまでしないですよ。他の会社のように、できません。の一言で済ませますよ。やること山のようにあるのに」と。
「いや、人が良いわけじゃないわ。だってそれだけのお金出してくれるんだったらやりますよ。ってことだから。」
「でも、ネットで同じ椅子探したりしませんよ。」
「そうなのかぁ?何が大事かって、その人が欲しい椅子に出会うことだからね。うちが最後の砦なのかな?って思ったら、引導を渡す責任あるからね。」
なんて会話をしました。

そして、そんなことを忘れていた頃、工房にお届けものが届きました。
それが上の写真。
高級そうなお豆の煮物、そして栗の甘露煮などのセット。
椅子の相談をされた方からでした。

 

ちょうど農家さんからたくさんの餅米を頂いていたので、料理人を目指している息子が、美味しい栗おこわを作ってくれました。

一口、口に入れると、甘い香りが広がって、幸せな気持ちになりました。
「ん〜、美味しい!」

それはただ栗が甘いから。ということではないのかな。

仕事には繋がらなかったけど、心が繋がった。
その喜びの甘さも含まれているのかも。

 

今年も一年、皆様に支えられ、応援してもらい、無事に(バカな怪我をしましたが…(笑)←スズメバチの女王蜂を捕まえようとして、脚立から落ち、機械に顎を強打。顎の骨を骨折(涙)2週間入院)乗り越えることができました。

来年も一人一人と、心が繋がるような出会い、仕事をしていきたいと思っております。

どうぞよろしくお願い致します。

今年一年、ありがとうございました。

家具工房旅する木 須田修司