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旅する木二拠点計画

「春はあけぼの」

高校の時の国語の先生は、古典文学に精通している人で。

「春は日が昇る前のうっすらと紫がかった東の空がいい。君たちはまだ春は遠いと思っているかも知れないけど、立春を過ぎた頃には、春の気配を感じるものです。」

なんて言っていたのを、

「なに通ぶってんだ。2月に春を感じるわけねーじゃねーか。しかも日の出前なんて寝てるわ。」

なんて聞く耳を持たなかったのですが…
当時の先生の年齢を超えた今、毎朝 愛犬のノンノとまるの散歩は 日の出前。


うっすらと紫がかった東の空が…
いいんです(笑)。

13歳のお婆ちゃんのノンノ(北海道犬)に、
「毎朝こんな風景を見れるなんて、早起きは三文の徳だよな」なんて言ってる自分に年を感じて、ちょっと可笑しいような、切ないような…(笑)

 

早起きにはなったものの、いち早く春の気配を感じる情緒はいまだ持ち合わせていない。

そんな僕に、とても解りやすく春の到来を教えてくれる音と風景がある。

朝、散歩犬としていると、田んぼの方から
「キューキュー、キューキュー」という鳴き声がして、振り向くと、

オオハクチョウが、去年の秋に取り残した穀物をついばんでる。

この風景が僕にとっては、春の訪れ。
そしてそれは、毎日の除雪、屋根の雪下ろしからやっと解放される安堵の風景です。

ノンノに声をかける。
「ノンノ、またこの季節が来たよ。」

 

この冬、北海道は災害級の大雪が降りまして。
なんと、工房の屋根の煙突がポッキリと折れてしまいました。

よりによってショールームの部屋。

…で

室内は雨が降ると土砂降りのような雨漏れ。
床は大きな水溜りができてしまう。

あ、緑のすずらんテープは、水が伝わって鍋に入るようにするために吊るしました。

ここのところ、地元の人もこんなことは経験がない。という量の雪が毎年のように降ります。毎日の除雪、屋根の雪下ろし、そして雨漏れと、ほとほと参っていました。

 

そんな僕に春の訪れを教えてくれるオオハクチョウは、この辺りで休憩をして、体力を整えて、もうしばらくすると、シベリアに向けて跳び立って行く。

夏の日本は暑すぎるから、春になったらシベリアに、そして冬のシベリアは極寒なので、秋になったら日本にやってくる。
心地よい風土を求めて季節移動をしている。

僕はふと思う。
そうかぁ。僕の仕事は、場所と機械さえあれば、場所はどこでもいいんだ。
ありがたいことに、仕事の9割は本州のお客様だし。
春から秋までは、ここ当別の東裏小学校で、冬は、どこか本州の気に入ったところで仕事をする。
そんな風に季節移動をしながら二つ場所を拠点にして、仕事をするって面白いんじゃないか?っと。

土地に縛られない野鳥たちは、太古の昔から地球規模でそんな季節移動を繰り返してきたんですよね。

散歩をしながら考える。どこがいいかな?

やっぱり極端の方が面白いよな。
九州?鹿児島、福岡?
沖縄?仕事しなさそう(笑)。
四国もいい!
伊豆、紀伊半島…
やっぱり廃校がいい。
二拠点とも元小学校なんて面白い。
西表島に閉校になった西表小学校なんてないものか?
→なぜかというと、今の工房は東裏小学校、東→西・裏→表=西表!
田舎だけど、都市まで1時間圏内がいい。
近くに綺麗な川が流れているのがいい。
海もいいかもな?

↑これ、冗談じゃありません。
どこかいい場所、いい廃校会ったら、紹介してください!
旅する木二拠点計画、本気で考えてます!

 

ワクワクしながらいろんな候補地を妄想していると、別の群れのオオハクチョウが青空を背に美しいV字飛行で近づいてくる。
手を伸ばせば届きそう。

いつの間にか日が昇り、眩い朝の光に真っ白の羽が照らされてキラキラしている。

僕の真上を通り過ぎようとした時、オオハクチョウたちは急に「キューキュー」鳴き始めた。
「こっちの世界においで。」っと言われたような気がした。