『家具工房旅する木』は豊かな「暮らし」、「心」、「時間」をご提案、ご提供します。


つむじ風通信

実は、学生の頃シナリオライターになりたくて、新聞社のコンペに出展していました。
箸にも棒にも引っかかりませんでしたが‥
文章を書くのは好きなので、妻のそよかぜ通信とともに、日常でのちょっとした出来事を
載せていこうと思います。なんちゃってシナリオライターにお付き合い下さい。

10/7 ”いよいよ『旅するギャベ展』”

 

皆さ〜ん、いよいよ今日から旅する木で『旅するギャベ展』が開催されますよ。
昨日、トニーさんがたくさんのギャベを持って来て、会場作りをしてくれました。

僕と妻は誰よりも早く気に入ったギャベ探し。
一枚一枚広げられるギャベに
「可愛い〜!」
「いいねぇ。」
「素敵♪」
「これもいい!」
など感嘆の声をあげまくり。

本当にギャベは心を幸せにしてくれるんです。
遊牧民がヒツジの毛を紡いで、草木で染めて、一本一本目の前の広大が風景やイメージして
編んで出来上がったギャベの持つパワーに、心が満たされるんです。
本当に不思議です。

我が家は僕も妻も、10年くらい前からこのギャベに魅了されていて、その当時札幌の大きな
家具ショップで毎年開催されていたギャベ展に足しげく通ったものでした。
大きなサイズはとても手が出なくて買えませんでしたが、座布団くらいの小さいサイズのものを
ちょっとづつ買って使っています。

また、トニーさんというギャベを扱っている、とっても陽気なガイジンさんの人柄に触れるのも
楽しみに一つでした。いつも、夕方でも久しぶりに会うと大きな声で
「グッモーニ〜ン!」っていうところから会話がスタート。

いろんなギャベによく使われる模様、”Tree Of Life (生命の木)”は長寿、健康への願い、
永遠なものへの想い、子供の成長の願いなどが込められている事を毎年聞いて、
旅する木のロゴを考える時、この”Tree Of Life (生命の木)”をロゴにしようと思ったのです。
そして独立する時、ものすごく気に入ったギャベがあったんだけど、大きな借金をして機械を
揃えた僕には、とても妻に「欲しいなぁ。」なんて言い出せない金額で、
「いつかこのギャベを買えるように頑張ろう!」という想いを込めて、二番目に気に入った
ちょっと小さいサイズのギャベを思い切って買って、今もリビングに敷いてゴロゴロしています。

その時は、まかさ旅する木でギャベ展をすることになるなんて、夢にも思わなかったことです。
なので、今日から始まる『旅するギャベ展』は夢の様で、僕が一番楽しみにしているんです。

本当に本当にギャベは素敵で素晴らしい絨毯なんですよ。
皆さん、是非見に来て下さい。ギャベを踏んで、座って、寝転んでみて下さい。
僕が言っている意味を体で感じることが出来ると思います。
世界に一つ、あなただけのギャベに出合ってしまうかも知れませんよ〜。

お会い出来るのを楽しみにしていま〜す。。

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9/22 ”話しを戻して…”

前回のつむ通は、機械の話しのつもりが、ついつい話しが反れてしまいました。
ということで、話しを戻します。って、一週間経ってるじゃん!

僕が毎日使っているいろんな木工機械。まさかどれも新品で買えるわけがなく、
全部中古のものを揃えました。
古いものでは30年くらい前のものもあるんです。上の写真の機械は”角ノミ”といって、
四角い穴をあける機械。
これも30年くらい前の機械。でも、現役バリバリで、大活躍しています。

残念ながら木工は衰退産業なので、それらの機械メーカーは今はほとんど存在していません。
横切り、自動カンナ板、という最も重要な機械は、『クワハラ』という機械メーカーのものを
使っています。というか、このクワハラの機械に出会ったから、独立しちゃったようなもので…。。
その辺の話しは前回のつむ通を… → こちら
そのクワハラも今や”強者(つわもの)どもが夢の跡”

 

先日ポストに機械メーカーからダイレクトメールが入っていました。外国製の機械を扱っている
メーカーから。
いや〜、驚きましたね。今の最新式の機械には。
最新式のNC(数値制御機械)なんて、自動ドアーの部屋になっていて、人が材料をセットして、
部屋から出て、自動ドアーが閉まったらボタンを押すと、機械が加工を始めるんです。
いろんな刃物を機械が自分で取りに行って、寸法切り、形取り、ホゾ加工、穴あけ、溝加工…
を全部やり終わったら自動ドアーが開いて、人が加工が終わった材料を外して、また新しい
材料をセットして、部屋の外に出てボタンを押す。っていうサイクルで、どんどん家具が
出来上がっていくんです。

他にもいろんなビックリするような機能を搭載した機械が載っていました。
最も原始的な機械ばかりを駆使して、家具作りをしている僕から見たら、
「これがあったらあの加工が楽ちんだなぁ。」とか思うものばかり。
それを見透かしてか、そのカタログの節々に、
「◯◯機械では出来ない加工がより簡単に、スピーディーに!」なんて挑発的な言葉が。

価格をみると、
「…。。  まあ、30年後、中古で買うか。」ってとこですかね。

先日、「LPがいっぱいあるので、それを収納出来る家具を作って欲しい。」という問い合わせが
ありました。
CDでもデジタル音楽プレーヤーでもなく、LPにはLPの良さがあるんです。

先々週、カフェに来てくれたお客様は、オリンパスの伝説の名機、『OM1』を持っていて、
思わず声をかけてしまいました。
デジタルカメラではなく、銀塩フィルムカメラ。しかも一切の電気制御無し、電池が必要ない
カメラです。久しぶりに聞くシャッター音、フィルムを巻き上げる音が良かったぁ!

いつもお世話になっていて、何かと気にかけて下さるエリアサービスの武石さん、
「運転しにくいんですよ。」と言いながら、僕と同い年のクラシックカーでカフェに
遊びに来てくれます。

まだまだあるぞ〜!

オール電化の家は停電になったらどうするの?工房は薪ストーブだから、何があっても平気!

今が旬のさんま。魚焼器で調理するより、炭火で焼くのが一番。

スウィートポテトより、焼き芋の方が旨い!

・・・

あれ〜?だんだん趣旨が違って来てるぞ。。

”◯◯機械では出来ない?”

「フン!それは腕の無い人間の言うセリフさ!」

え?それは”金の無い人間の言うセリフ”だって?

「…」



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9/14 ”機械の話しのつもりが…”

9月半ば、季節の変わり目ですね。
ここ、北海道は暑くなったり、寒くなったり、寝る時は暑いのに、
朝方寒かったり、体調管理が難しい時期です。
特に子供は…。
一昨日から息子が40℃近い熱が出て、妻は毎日看病の日々。
僕もそうだったのですが、男の子は一気に高熱が出ますね。

ところで、今日は木工機械の話し。
僕が毎日使っているいろんな木工機械。まさかどれも新品で買えるわけがなく、
全部中古のものを揃えました。
おっと、いかにも独立するから、機械を揃えた。という感じですが、実際は逆。
程度の良い中古の機械に出会っちゃったから、独立を決心。
冗談ではなく、衝動的独立。なんです…。

ちょっと話しが反れちゃいますが、自分の工房を持ちたい!っとこの世界に
飛び込んだものの、工房巡りをしていると、そのほとんどの人が奥さんの収入に
頼ってる。もしくは、奥さんに逃げられて、「自分の好きなことをしているんだから、
貧乏でも仕方ない。」という人ばっかりで、すっかり独立する意欲が意気消沈。
まあ普通、木工の世界に飛び込む前に調べとくでしょ!っという感じなのですが。

何とか活路を見出そうと、修行しながら建築の勉強をし、建築士を取得。
家を設計して、中の家具もデザイン、家具は自分で製作し、クラフト、小物までも
提案し、デザイン、製作する。というストーリーのある仕事をしようと、次は建築の世界
に飛び込みました。

建築の設計をしたかったのですが、「建築の設計は◯◯大学の建築科を卒業して、◯◯先生
の元で何年も下積みをしなきゃ、無理ですよ。」ということで、結局建築の備え付け収納
を製作する工場に勤務することに。いきなり役職を付けてくれたのですが、そんなものには
興味がない僕は、悶々とする日々を送っていました。

そんな時、友達が「機械屋さんに良い機械があるらしいから、見に行こうよ。」っと
誘ってくれて、見に行った時にあったのが今使っている機械たち。
妻にも誰にも「独立する!」なんて言ってなかったのに、つい機械屋さんに、
「この機械たち、誰にも売らないで下さい。全部僕が買いますから!」って言っちゃったんです。
今考えても不思議ですね。なんであんな事言ったんだろう?

それからお金の工面、場所探し、独立のいろはの勉強。仕事探しなんて二の次、三の次。
担保も保証人もいない僕は、担保も保証人も必要せずにお金を貸してくれる金融機関へ。
何を見るかって、僕自身と、事業計画書。
最初は門前払い。それでも何度も通って、事業計画を考えて考えて、練って練って…。
相手も自分のお金じゃないから最後は、まあ、こいつからお金が返って来なくてもいいか。
とでも思っちゃったのでしょう。異例で、満額を貸してくれました。

場所もいろいろ当たりましたね〜。札幌は家賃が高いですから。
木工をやろうとしている貧乏そうな若者に情けをかけて、「それだったらうちの納屋、
自由に使ってもいいぞ!」なんて言ってくれる人の良い農家のおじさんがいないものかと、
農家を当たっても、そうそういるわけもなく、「そうだ!たくさんの農家を知っているのは
農協だ。」と農協へ行ってお願いをしたり…。
結局相手にしてもらえず、家賃月25万円の空き倉庫を、お願いしてお願いして16万円に
値引きしてもらって借りる事になりました。それでも苦しかったですね。

こんなデタラメな経緯での独立は、でも僕にとっては多分、必要不可欠な経緯で、必死で考えた
事業計画を遂行するためには廃校が必要で、木工教室をし、カフェをオープンし、木育の部屋
を作り、いろんな人に助けてもらいながら、何とか事業計画書に描いたような展開が出来て
いるから不思議です。
まあ、この話しをするとほとんどの人が、「誰が偉いって、奥さんが偉いよね。」と。
全くその通りで、自分でもよく付いて来てくれるなぁ。と思います。

独立してもうすぐ6年。あの時の事業計画の内容が、まがいなりにもほぼ形になり、今次の
計画に取りかかる準備をしています。
大切なものを大切に、守るべきものは守りながら、少しずつ、前に進んで行きたいと思っています。

本当は木工機械について書こうと思っていたのですが、すっかり話しが反れちゃいましたね。

”機械”の話しは別の”機会”に…。



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9/6 ”実は僕、3回目の結婚なんです”

台風12号の影響により、ここ3日間、東裏も強風が吹き荒れています
今日、北海道は一番の荒れ模様です。
西日本の洪水、土砂崩れなどによる甚大な被害の様子をテレビで見ました。
アメリカでもアイリーン台風や、NYでの地震など、世界中で何百年に1度レベルの
異常気象が多発しています。
世間で騒がれている、2012年地球破滅論(マヤ暦では、2012年12月で一つの
区切りを迎える)とか、アセンション論とか、なまじウソではなさそうな気がしてきます。

ところで、8/22のつむじ風通信”右回り?左回り?”で触れた、不思議な丸い石を
使ってフーチングをする不思議な方。20年も波動を研究し、様々な難病を治療されている、
その筋では有名な先生なのですが、また工房へ奥様を連れて来てくれました。
今度は前回と違って、黒っぽい丸い石を持っていました。
波動や、見に見えない世界に興味のある僕は、妻や子供たちを呼んで、いろんなお話を
聞かせてもらいました。

フーチングはすごくて、前回は僕の股関節の古傷をズバリ当てられて治してくれましたが、
今回は、前世のことなどをちょこっと教えてくれました。

何と、僕と妻は前世で5回会った事があるんだとか。1回は友達として、1回は親子として、
そして夫婦が2回で、今回が3回目の夫婦なんですって。

魂が会う人はだいたい決まっていて、現世では関係を変えて会って、その関係の中で学んだり、
一緒に乗り越えたりするんだそうで、だから”世間は狭い”とか、”初めて会った気がしない”
という経験や、印象を持つんでしょうね。

それにしても3回目の夫婦かぁ。それにしちゃぁ、まだまだ妻の事を理解出来ていないし、
全くもって、”あうんの呼吸”には程遠いなぁ。
でも、結局のところ、”腐れ縁”なんですね。
”腐れ縁”って、面白い言葉ですね〜。”腐った縁”ということで、出来る事なら断ち切りたい。
でも、「お前とは全く”腐れ縁”だ!」などと言いながら、何となくそこに愛情がある。
言われた方も悪い気がしない。
切っても切れない、”鎖(くさり)”が本当の語源なんだとか。

3回も夫婦をやるなんて、まさに”腐れ縁”。この人からもっともっと学びなさい!ってことですね。
確かに考え方や、感じ方、好みは正反対なんです。お互いの第一印象も良くなかったし。
そんな二人がなぜか結婚し、18年も夫婦やってるんだから、”鎖り縁”ですね。
「それじゃあ仕方ない。」なんて心境になりました(笑)。
とっとと学ばないと来世でも夫婦をやることになっちゃいます…。って、僕に振り回されている
妻や子供たちの方がそう思ってるかも。

それにしても波動でそんな事まで解るんですね。ビックリです。
身体のわずかな不調や、レントゲンなどでは解らないような些細な背骨や骨盤のズレなんかも
その波動をキャッチするんですって。
これじゃあ、ご注文頂いた、治療院で使うソファ、わずかな寸法のズレも許されませんね…。


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8/28 ”大事なのは、手放し方”

 

今日、東裏の農産物を収穫、販売する”ひがしうら里の収穫祭”がここ、東裏小学校で
行われました。
晴天に恵まれ、1,000人を越える方が枝豆や、芋掘りの体験や、激安の農作物を求めて
来てくれました。
僕の毎年楽しみにしているイベントです。早速、いっぱいの枝豆をゆでて頂きました。
美味しかった〜♪


話しは変わりますが、先日札幌のお客様の家に家具の取り付けをして、夕方工房へ
戻って来ると、工房の東裏小学校の玄関にこんなものが置いてありました。
カヤックのパドルと立派なメロン。そしてメロンの箱にメモ書きが。
「お久しぶりです。今はこんなものを作ってます。」

7、8年前、旭川にいた頃、毎週のようにカヤックをかついで激流で遊んでいた頃の友達が
工房を留守にしている間に遊びに来てくれました。すっかり忘れていたけど、その頃貸した
パドルを持って。

その頃は大工をしていたんだけど。。
2〜3
ヶ月の間、ガッと働いては仕事を辞めて、カヤックとテレマークスキーを毎日楽しむ。
という仲間たち。
一度きりの人生、とことんやりたい事を楽しんでやろう!という彼らの姿に、
「こういう生き方もあるんだぁ。」と、当時、家具の修行をしていた僕には、とても新鮮で、
刺激的で、毎週末、一緒に遊んだものでした。
多分、すでに家族がいなかったとしたら、僕もそういう生き方を選んでいたと思います。

早速電話をすると、懐かしい声がしました。
「今は富良野でメロン農家をしているんだ。はね品だけど食べてみて。」と。
どこをどう見ても立派なメロン。これがはね品だなんて、こだわった良いものを作ってるんだな。「川?もう5、6年行ってないよ。」
「俺も独立してからはほとんど行ってない。」

お互い川から離れたら、会う事もなくなってしまいました。
人と人の関係なんて、そんなものかも知れませんね。
何かを通して繋がり、その何かが無くなった時、また離れていく。
人生とは、そんな事を繰り返しているんだろう。
”淋しい”ということではなく、そういうものなんだなぁ。っと思いました。

そして、たまたまそんな事を考えていた時、携帯電話がなり、
これまた数年振りの知り合いから「移転した工房へ遊びにいっていい?」っと。
”たびもっくんが今日も行く”のコーナーで紹介した、ギャベの販売をしているトニーさん。
僕が藤田工務店に勤めていた頃、たまに現場で会って話しをしていた陽気な外人さん。
トニーさんと会うと、ついつい話しが盛り上がって、いつも現場仕事がはかどらなかった。

その後、独立しギャベの展示会場で偶然会った時、ものすごく気に入ったギャベを発見。
価格もすごくて、独立したてで、借金を抱えている僕には到底手が出なかったのですが、
いつか、このギャベを買えるように頑張ろう!っと、その気持ちを忘れないように、小さめの
ギャベを購入しました。小さくても10万円くらいしたんじゃなかったかな?

そして昨日、前々職、オリンパスに勤めていた時、同じ開発チームで仕事をしていた後輩の
女の子からメール。若くて元気で明るく綺麗な彼女も、あれから12年経って、元気で明るく
綺麗なお母さんに。
「わざわざ”若くて”を取らなくていいでしょ!」って怒られちゃいますね(笑)。
家族で遊びに来てくれることに。とっても楽しみです。

様々なきっかけで、繋がっている”何か”が無くなって離れることになったけど、
だからこそ大事な事は、その”何か”をいつも探していること、そしてもっと大事な事は
”何か”の”手放し方”なんだろう。
新しい”何か”を手に入れる為には、古い”何か”を手放さなきゃいけない。
でも、出会った人と、思い出はずっと心に残っていく。
何年も、何十年も経って、ふっと思い出した時、どうしてるかな?会いたいな。と思い、
思われるような、そんな手放し方をすることが、”人生を大切に生きる”ということなんでしょう。

そして新しい出会いも新鮮でワクワクするけど、古い友人に久しぶりに会うことは、それ以上に
楽しみで、心が踊ります。

9月の始めに先程のオリンパス時代の後輩の彼女がご両親と家族で工房へ来る予定。
昔、家に遊びに行った時、元気な彼女のお母さんは、もっと元気で盛り上がったものでした。
ご主人とも当時、たまに遊んだし、成長した子供と、この前産まれた双子ちゃんに会うのも
楽しみです。
ただ、髪が薄くなって、丸坊主にした頭を見られるのが、ちょっと恥ずかしいですが…。。


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8/22 ”右回り?左回り?”

昨日、一昨日とカフェのオープン日でした。
毎週平日、妻ががケーキを焼く時、「今週の予想は?」
と僕に聞いてきます。
そう、焼くケーキの個数を決める為に。

僕は週末の天気予報や、いろんな条件を考えて、
「今週は来るぞ〜!」とか、「それほどじゃないな。」とか予想。
これがなかなか当たらない。来客予報士の道は険しくて遠い…。。

今日、カフェが終わって、明日納品の家具を車に積み込んで、さあ終わりにしようか。
という時に電話が。
「これから家具を見に行っていいですか?一時間くらいかかってしまいますが。」

元々カフェは、僕の作った家具に触れて、ゆっくりして頂きたい。という思いでオープン
したのですが、ありがたいことに口コミでどんどん広がってくれて、今年はここが
家具屋さんだと知らないで来てくれている方も多く、会計後、「ショールームもございます
ので、是非ご覧になって下さい。」と言うと、「ショールーム??」という反応が。
僕と妻の立場が逆転気味…。。

なので、家具を目的のお客様からの電話には、
「どうぞ、お待ちしていますから、気をつけてお越し下さい。」

ソファを探しているというお客様で、ショールームやカフェのソファを案内すると、
「先生」と呼ばれている方が何やら怪しげな、直径2センチくらいの丸くて白い石のような
ものを取り出して、ソファの上でぶら下げてる。
そして、「すごい。右回転だ!」などと意味不明な会話をしているのです。
僕が「右回転とかって何ですか?」っと聞くと、
「これはフーチングと言って
、波動を感知するもので、波動が低いもの時には左回転、
普通のものには前後運動、そして高い波動を感知すると右回転するんだ。」っと。

そして僕の足を見て、「左足が調子よくないねぇ。」と言ってさっきの丸いボールを左足の上で
ぶら下げると、クルクルと左回転。

そうなんです。僕は学生時代サッカーをやっていた時、左足の股関節を痛めて以来、
いまだに引きずっていて、疲れがたまると左足が上がらなくなるんです。

「多分左右の足の長さが違うと思うよ。」と床に座って足を伸ばすと、1センチくらい左足が短い。
「椅子に座って。治すから。」と言って腰の辺りをさすったり、軽〜くひねったり、ものの
2、3分もしないうちに、「これで良くなったはず。」
っとさっきのように床に座って足の長さをみてみると、なんとぴったり同じ長さに。
慣れないカフェでの仕事にちょっと疲れていた左足が確かに軽くなって、上がるようになりました。
「回りの人に、頭がおかしいと言われながら、こんな事を20年やってます。」とのこと。

今まで家具を作らせて頂いたお客様の中には、”気”を感じられる方がいたりして、数名の方から
「家具が熱いんですけど。」とか、「旅する木の家具のある部屋と、ない部屋の波動に差がある。」
という事を聞かされてはいたのですが、残念ながら僕はよくわからないので、そうなのかな?
と半信半疑だったのですが、目の前で明らかにクルクルと右回転する不思議な丸い石と、
僕の左足の不調を見破って治してくれた先生(?)、お客様に言われると、
「やっぱりそうなんだぁ。」と実感しました。

波動が高くなる理由が解らないし、実際に僕が感じるわけではないので、それを期待されて
ご注文をいただく事があるのですが、果たして完成した家具の波動が高いのか、とても不安でも
あります。

目に見えない世界がある事は理解しているし、”現実の世界は、心の世界の結果”だということも
理解しているけど、まだまだ”理解”のレベルで、心底から”感じる”レベルまで達していません。

『旅する木』を創業してもうすぐ6年。ただひたすら”お客様の喜ぶ顔を見たい。”という思いで、
一切のショップに卸さず、宣伝もせず、やってこれているのは、”目に見えない世界”のお陰だと
思っています。
だから、僕が出来るとこと言えば、これからもずっと、ただお客さんの笑顔を想像して、丁寧に、
心を込めて喜んでもらえるものを作ること。



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8/9 ”良い職人は、良い音を出す

北海道も夏本番!って感じですね。連日真夏日です。
今日は無風。しかも仕事内容がテーブルの天板のカンナ掛けだったので、
汗びっしょになりながらやってました。
よりによってミズナラという堅〜い木なので、大変でしたよ〜。

『旅する木』のテーブルなど無垢の天板は、一枚一枚、手鉋による仕上げなので、
手触り肌触りは、キズを細かくしていくサンダー仕上げとは全く違うんです。
ワイドベルトサンダーという機械だったら、2、3分で天板が出来上がるのですが、
手鉋だと、裏表仕上げるのに、数時間もかかります。
しかも途中で鉋が切れなくなるので、研いだりしなきゃいけない。季節や、天気によって、
鉋台が狂うので、調整しなきゃいけない。
全く非効率的なのですが、今どき、鉋を引ける職人がいなくなってきているのと、
やっぱり仕上がり面の違い、そして、鉋が木を削る時の音が好きで、僕はこだわっています。

”音”と言えば…
”職人”という仕事はいろんな職種がありますが、共通して言えると思っている事があります。

『良い職人は、良い音を出す。』

職種に関わらず、腕の良い職人さんが道具や、機械を扱う時に出す”音”は、なんだか
心地良いと思うんです。つい聞き入ってしまう。
切る方と切られる方、打つ方と打たれる方、削る方と削られる方、その双方が納得している。
って感じですかね。どちらにも無理をさせないように扱うのが、”腕”なんでしょう。

人を育てる時、仕事の一部始終を見ているわけにいかないので、”音”で判断します。
音がしなかったら、手が止まっているってことなので、悩んでいるのか?
機械や、木が悲鳴をあげていたら、削るのが早すぎるのか、削る量が多すぎるのか?
ビビった音がしたら、しっかり押さえられていないのか?などなど。

先ず、”気にならない”という領域が一つのステップ。
この領域には、速い、遅いの差こそあれ、大抵の人が到達できると思います。
そして、目指すは、”心地良い”という領域。ここへの道のりは遥か遠い。
技術うんぬんだけでなく、心も関係していると僕は思っています。
僕自身まだこの領域を目指している途上。
いつでも”心地良い”音を出せるよう、技術と心を磨いていきたいと思っています。

ところで上の写真。製作途中の材料を桟積みしています。
毎日仕事を終える時、木が反らないように、裏表、同じ環境にするようにしています。
こういうことを怠ると大変な思いをします。
木は「ああして、こうして。」とは言わないけれど、居心地が悪いと、割れたり反ったりして
思いを伝えてきます。

”職人”という仕事。それは”聞こえない声を聞き取ること”なのかも知れません。


妻によく言われます。
「木の心は聞き取れるのに、どうして私の心は聞き取れないの?」

女心ほど反りの読めないものはありません。。

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8/3 ”おしべとめしべ”

いやいや、北海道も暑いですね。
と言っても、昨年程湿度がないので、気持ち良く過ごしています。
朝晩は、ちょっと肌寒く、長袖が必要なくらい。
北海道の特権ですね〜。

それでも、毛皮を着込んだ北海道犬にとってはこの時期、耐えらないようで、
愛犬ノンノは草の上でクタ〜。息をハアハアしています。

北海道犬、みなさんご存知ですか?ご存知ですよね〜。
そう、ソフトバンクの”お父さん”、カイ君は北海道犬。
北海道犬は天然記念物に指定されていて、ペットショップには売られていません。
去勢手術などは行わずに、時期が来たらかけ合わせて、子孫を残していくことを条件に、
ほんの気持ち(血統書くらい)払って、赤ちゃんを頂くのです。

僕は日本の犬が好きで、特に北海道犬が好きで、2年前にノンノ(♀)を石狩の方から
頂いて、可愛がっています。

そのノンノ、先日女性のアレが来て、すぐに石狩の元飼い主柴田さんに連絡。
柴田さんは北海道犬命!という様な人でお婿さん候補を連れて来てくれました。
ちなみに、僕はノンノの様子がおかしいと、すぐに柴田さんに電話して聞くんです。
先日も、

僕 :「夏になって蚊がいるから、予防接種とかした方がいいんですかねぇ?」
柴田さん:「全然大丈夫。蚊にさされて死ぬようなのは、北海道犬じゃない!」
僕 :「…」

いやいや、北海道犬全体として見れば、そうかも知れないけど、僕にとっては、
かけがえの無い、たった一匹のノンノなわけで…。。

一言で”北海道犬”と言っても、白、赤、黒、色んな毛色の犬がいます。
その中でも特に珍しいのが、”トラ”と呼ばれる、赤と黒が混ざった犬(写真の左)で、
柴田さんは”トラ”の繁殖に命を燃やしてる人。

我が娘だからひいき目に見るわけではないのだけれど、ノンノはかなりの美人なんです…(笑)。
いやいや、だから、我が娘だから、って訳じゃないんですって!
噂を聞きつけて、わざわざ遠くから、ノンノを見に来る北海道犬好きな人もいるんですよ。
だから柴田さんも、「こんなべっぴんさんは滅多にいないから、へんなのをつけたくない。」って、
美男子の”トラ”を捜して来てくれました。

でも、今どきの色男はダメですね(皮肉?)。草食系で。頑張ろうとしない。
ちょっと嫌がられるとすぐショボン・・・ってあきらめて遊び始めちゃう。
仲は良さそうなんだけど。
柴田さん、わざわざ何回も来てくれてトライさせたんだけど、結局今回は見送りに…。。
あ〜、孫を見たかったけど、仕方ないですね〜。

ところで、僕の娘もいつの間にか中学生になっていて、コソコソと隣の部屋で話す友達との電話の
会話を、耳をダンボにして聞いていると、「誰が好き」とか、「誰と誰が付き合ってる」とか…。
「付き合ってる?お父さんが中学の時はなぁ…!」なんて野暮なことはしませんが、
ノンノと色男のトラのやり取りを見ながら、娘にもそろそろこういうのを見せた方がいいのかな?
なんてちょっと考えました。

ノンノと散歩しながら、
「刺激が強すぎるかなぁ?まだ早いかなぁ?どう思う?ノンノ。」なんて言いながら道ばたに
咲いている花を見て
「!!!」

先ずは”おしべ”と”めしべ”からかな?

って、『北の国から』見過ぎでしょ!


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7/26 ”それぞれのスケール感”

  

仕事で写真のような端材が出ます。それを集めておいて、息子に渡すと、
黙々と創作活動が始まって、「パパ〜、お城出来たよ〜。」なんて呼びに来ます。
もちろん端材なので、形も大きさも樹種も揃っているわけでなく、てんでバラバラ。
それを時に平面に広げて、時に立体に、時に高く積み上げたり、実にバランスよく
作っていきます。

我が子ながら、我が子だから(?)「お〜!すごいね。センスあるんじゃない?」
なんて関心しながら写真に収めます。

幼稚園の頃の僕はというと…。
友達とほとんど遊ばずに、先生や他の子供たちとほとんど話す事なく、ただひたすら
積み木で遊んでいたんだそうです。
親が、「これではまずい。」と、家で目一杯積み木で遊ばせれば、飽きて幼稚園では
友達を遊ぶのでは?と期待して、幼稚園にあるのと同じ積み木を買ったんだそうです。
でもそんな浅はかな親の期待に反し、家でも、幼稚園でも積み木で遊んでいたんだとか。

でも今はてんでダメですね。つい形のあるものを作ろうとしてしまう。
左右シンメトリだとか、整っているだとかを気にしてします。
元々端材なので、同じ大きさであるわけがなく、あるパーツのちょうど半分のサイズだとか、
そんな都合良くできていないので、何か作ろうとすると、これが以外に難しい。
なので、平気に斜めに使ったりしている息子の作品を見て、「才能があるかも…?」
なんて改めて関心します。

ところで、人には生まれ持ったそれぞれのスケール感というものがあるんだそうです。
僕の場合、多分”人”のサイズなんでしょうね。カメラの開発をしていた頃も、
”世界最小・最軽量”というカタログスペックを追い求めるモノ作りに違和感を感じて
”それは使いやすいの?”っといつも思って仕事をしていました。
それで”人のサイズにあったモノ作り”をしたいと、この道に飛び込みました。

大袈裟な例で言うと、僕の好きなモエレ沼公園をデザインしたイサムノグチ。
彼は”地球をデザインする!”という感覚を持っていたようです。モエレ沼公園の基本的な
デザインは、すでに子供の頃に描いていたんだそうです。

将棋の羽生名人は、将棋盤の中に宇宙を感じられる。これも一つのスケール感だと思います。

息子のモノ作りを見ていると、僕よりスケール感が大きく、建築のサイズなのかな?なんて
思います。積み木で、いい建築を次々と生み出すんですよ。こんな家だったら楽しそう!
住んでみたい!なんて思わせてくれます。
「将来は建築家だな。」なんて夫婦で話しをしたりします。
「息子が建築の設計して、父親が中に収まるインテリアのデザイン、製作をするなんて
いいかも!」なんて。
親バカですね〜。すみません。。

そんな親の期待とは裏腹に、保育園で作った七夕の短冊に書かれていた言葉は…。

「ごーかいじゃーになれますように…」


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7/20 ”亜麻の季節”

7月の3連休。北海道は一年で最高の季節のはずですが、残念ながら3日間とも
ぱっとしないお天気でしたね。

この休み中、旭川や札幌から、お世話になっている業者さんや、独立して
工房をされている方々、会社を中心になって引っぱっている方々など、
木工関係者総勢20名近い人たちが旅する木に集まって、真夜中までお酒を飲みながら
楽しい時間を過ごしました。

僕も含め、木工という職業を選択する人たちは、どこかに一つ、人生を置いて来た
人たちが多いんですね。
「本当は◯◯になりたかったんですよね〜。」って。
それでいて
完全に社会の歯車の一つになりたくない!って、ささやかながら、
一生懸命自己表現をしている人たちなので、話していて楽しい人たちばかりで、
初対面の人もいたのですが、皆で盛り上がりました。

今年は例年より亜麻の花の咲くのが遅れていて、今がピークくらいです。
今朝、家族で自転車に乗って亜麻畑に行ってきました。
亜麻色の小さくてか弱い花がそよ風に吹かれていました。
亜麻の花は、”可憐”という言葉がよく似合います。
女優で例えるなら、蒼井優さんや、石原さとみさんって雰囲気ですね〜♪
僕は好きです!!って亜麻の花?それとも女優の方?

ちなみに僕の今のイチオシは宇賀なつみさん。ご存知ですか?
そう、報道ステーションのお天気キャスター。めっちゃ可愛い!!
「お天気お姉さんを可愛いって言うのはおっさん現象。」と妻と娘に言われます…。
あまりに可愛すぎて、つい肝心な天気を聞き忘れたりして…。。超おっさん現象。
おっと、話しがすっかり横道へ。

工房に毎日のように「亜麻畑はどこですか〜?」って尋ねて来る人がいます。
亜麻は連作が出来ないので、毎年畑が変わるんですね。
なので、去年の畑の場所に行っても今年は亜麻畑じゃないんです。
さらに…
亜麻の花は午前中しか咲かないんです。お昼近くになると、見事に全部散っちゃって、
亜麻畑を前にして、「亜麻畑どこですか?」ってな具合。
だから、亜麻の花を見に来る方は、午前中の早い時間に!

それにしてもめぐるめく季節ほど、時の流れを感じさせるものはありません。
その季節に咲く花や、夜空に輝く星や、鳥のさえずりや、心地良い風など、その一つひとつが
「またこの季節がやってきたなぁ。」と過去の同じ時期を思い出させてくれます。

初めて亜麻の花を見たのは、まだ工房を移転する前。地元の人に連れて来てもらいました。
風が見えるようにゆらゆらと身を委ねている亜麻の花を見て、「可憐で美しい花だなぁ。」
と思ったのを思い出します。

あれから4度目の亜麻の季節。
地元の方々の協力で、東裏小学校を工房にし、亜麻の種を絞ったオイルを家具の塗装に使い、
今日もここ、亜麻の里で家具作りをしています。

一生のうち、あと何度亜麻の花を見る事が出来るだろう。
あまりにもはかなく、短い命の亜麻の花を見ていると、そんな事を思ってしまいます。
そして、可憐に咲いている花の回りには、たくさんのつぼみがあって、明日、また次の花が
咲こうとしています。

こんな風に毎日を新鮮に、今日一日の命を感じながら生きたいものです。


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7/14 ”空間を決めるもの、それは家具!”

  

いや〜、帯広は暑かったですね〜。
先週末、帯広で個展をしました。この時期の北海道では珍しく、30度を越える猛暑。
でも、会場の”北のれんがギャラリー”はれんがギャラリーって言うくらいなので、
レンガで作られた建物で、中は冷んやりとして気持ちよかった。

ところで、今回、家具やクラフトを旅木号にギッシリ詰め込んで、入り切らない半分は
運送会社のトラックにこれまたギッシリと詰め込んで、

旅する木の新ブランド、化学物質を使わない家具作り『心と体と木と暮らし』の家具を含め、
全部で約40作品の家具達を展示しました。

仕事が詰まっていた、という言い訳をしながらも、いつもの僕の性格によることの方が
圧倒的な理由なのですが、個展に出展する新作家具が完成したのはほぼ前日。
当日の車に積み込む直前に2回目の塗装…。。
前日の夜、個展会場の平面図を取り寄せて、持って行く家具と、レイアウトを決定。
なんていう相変わらず担保無し、保険無しの危なっかしい準備を、スタッフの山口君や、
強力助っ人白木君に助けてもらいながら遂行。
雲一つない青空、深緑の森の中を、サザンを聞きながら意気揚々と帯広へ乗り込みました。

まあ、こういうイベントの時には必ずハプニングはつきもので…。。
今回も例外ではなく、到着し、会場を見て、ちょっとビックリ。
全く勝手なイメージで、外はレンガ作りで、中はフローリングの綺麗な内装のギャラリーを
イメージしていました。
ところが…。

会場は、外観はレンガ作りで古い味わいがある建物。そして中も。
床は枕木を雑然と並べ、壁はコンパネにペンキを塗ったもの。
そして平面図には無かったのですが、天井が下がってきたため、それを支える、いかにも
後から取り付けた感じの柱が並んでいました。

3人とも、
「…」
少しの間入口に立ちすくんでしまいました。

とりあえず柱は完全に予想外だったので、レイアウトを考え直さなければ。。
まあ、考えていたレイアウトも前々から用意周到に準備していたわけではなく、前日に
サラサラって考えたものなので、現場を見ながら修正。

「この空間で大丈夫かな?」と不安に思いつつ、家具を組み立て、設置し、照明を上手く
家具や、壁に当てると、

  

「なに、この完成度!」
「すごくいいじゃん!」
「家具ってすげ〜!」

本当にビックリするくらい引き締まって、素敵な空間になりました。

僕は常々思っています。
”どんな建築が素晴らしくても、そして、そうでなくても、最終的に室内を決定的に決めるものは、
家具と建具なんだ!”と。
家具が設置された後のギャラリーの完成度を見て、改めてその考えの正しさと、そして
家具の持つ力の凄さを思い知らされました。

いつものように行き当たりばったりですが、自信を持って喜んでもらえる空間になり、
いざ、お客様を迎えると、こちらの予想を上回る反応で、「すご〜い、いつまでやってるの?
お友達に教えなきゃ!」など、とても嬉しいリアクションを皆さんから頂きました。

今回の個展の目玉である、『心と体と木と暮らし』の家具の説明をすると、
「素晴らしい取り組みですね〜。」「必要としている人、多いと思う。」「なに?この
気持ちよさと、心地良さ!!」など、嬉しい言葉も頂きました。
土曜の夜に行われた、旅する木のスライド発表の後には、「家全部を建てて下さい!」
という最高の褒め言葉も頂き、とても嬉しくなりました。

個展期間中、一緒に開催した手紡ぎ、草木染め、手織りの”うさとの服”の安達さんや、
友達の智ちゃんとローフード(ご存知ですか?この事についてはまた近いうちに触れたいと
思っています。)のお店や、超隠れカフェに連れて行ってもらったりと、とても楽しく、
有意義な時間を過ごさせてもらいました。

とてもありがたいことに、仕事が本当に忙しく、この個展に向けての新作の家具の
製作を直前まで迷っていたのですが、僕の基本的な考え、
「やるなら度肝を抜く。度肝を抜けないなら、やらない。」という思いで、仕事をしつつ、
次から次と個展に向けた家具も同時進行で製作してきました。
ギャラリーに並んだ家具を見て、お客様の反応を聞いて、そして、これからも繋がって
いきたい仲間や友達と出会って、大変だったけど、やって良かったなぁ。と思いました。

わざわざ会場に足を運んで下さった皆様、本当にありがとうございました。
思い出深い、帯広での個展になりました。

あ、そうそう、思い出と言えば、帯広が地元の白木君が是非に!という事で連れて行って
くれたカレー屋、『インディアンカレー』、美味しかった。お勧めです。

って最後がこれかい!


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7/5 ”僕が女性に求めるもの?”

一年の半分があっという間に過ぎてしまいました。
今年上半期、何といっても大きな出来事は東日本大震災と、それに伴う原発の放射能漏れ
に尽きると思います。
何か出来る事は?と思いつつ、日々の忙しさにかまけて、募金くらいしか出来ていません。
友達のBon Vivantの久保さんは、パティシエにしか出来ないことを。ということで、
お店を休んで現地に行き、被災した子供たちに、誕生日にケーキを食べられない子供たちに
生ケーキをプレゼントしに行きました。子供たち、とても喜んでいたようです。
なかなか出来る事ではないと思います。

昨日、やっと待ちに待った新作の椅子の革張りが上がってきました。
木部の加工はもちろん、僕がやるのですが、座面や背の革張りは、専門の職人さんに
頼んでいるのです。
椅子は、全部木ならそんな事ないのですが、革張りがからむ場合、木部の加工が終わって、
最後に張り屋さんに出すので、完成を目の前にいつも”お預け”状態になるんです。

愛犬ノンノ(北海道犬)の散歩の後、ご飯を目の前に、「おすわり!」「待てっ!」
っと言って、ちょっといじわるに、しばらく待たせていると、ベロを出して、息を
ハアハアやって、よだれをポタポタ垂らしてる。僕自身、そんな状態。
早く見たい!早く座りたい!って。

早速取りに行って、工房で最後の取り付け。待ちに待った完成〜!!
いざ完成すると、すぐには座らない。自分の中で、もったいつけるんです。
夏の暑い日、お風呂上がりの最初の一口目のビールのために、午後から水を飲まない

って感じ。

正面から見たり、斜めから眺めたり、後ろに回ったり、遠くから見たり…。
「う〜ん、美しい!綺麗過ぎる〜♪」
「素晴らしい。これはいい!」
なんて自画自賛の観賞タイム。

そして姿形を堪能してから、やっと座ってみる。恐る恐る。
だって座り心地が悪かったら台無しだもん。
「う〜む、いい!すごくいい!」
「なにこれ、立てなくなるじゃん!」
自分に酔ってる…。。

ここでやっとホッとして、安心して、苦労と、喜びが込み上げてきます。
それからまた観賞タイム、体感タイム、感触タイム、思い出しタイム。
小一時間。

さっき、ビールの話しが出ましたが、僕は家では全くお酒は飲まないんですねぇ。
半年前に買ったのか、もらったのか、忘れちゃったけど、そのままいまだに冷蔵庫に
入ってる。そんな感じ。
でも、新作の椅子を目の前に、「お酒でも飲みたいなぁ。」なんて思います。
誰もいなくていい。いや、むしろいない方がいい。
椅子を目の前置いて、一人でちびちびやりながら、

「ここまでくるのに苦労したよ。」
「それにしても綺麗だねぇ。」
「スタイルいいねぇ。」
「触り心地、スベスベだね。」
「最高だよ。」

なんて、ここだけの会話を聞いていたら、ただのエロおやじですね。

外国語には、それぞれのモノに、男性、女性の人称があって、男性名詞とか、女性名詞
とかあるんですね。
『椅子』、ドイツ語では、男性名詞だそうです。
フランス語、イタリア語、スペイン語では女性名詞なんだそうです。国民性なんでしょうか?

さっき会話でも判る通り、僕は椅子を女性的感覚で捉えています。
だから椅子は美しくあって欲しい。繊細で可憐で、優しく、おしとやかであって欲しい。

僕は椅子に、こんな事を求めてデザイン、製作しています。

だって、こんなこと、妻にとても言えないもん…。。


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6/27 ”降りてゆく生き方”

北海道は20度を大きく越える暑い日が続いたかと思ったら、ここのとこは
15度前後と肌寒かったですね。
でも、昨日は天気も良く、気温も上がって、気持ちが良かった。
そんな一日、お客さんとの打ち合わせも兼ねて、気分転換に、厚真町にドライブ。
『降りてゆく生き方』という映画を観に行ってきました。

ほとんどの人がすでに気付いていると思いますが、
「物質的な豊かさ=幸せ」という資本主義社会の概念と、資本主義社会そのものが崩壊しつつあり、
経済成長のピークはすでに過ぎ、我々は今、下り坂の時代を生きていると思います。
その中で、本当に大事なものは何なのか?その大事なものを大事にする為に、
「何を得るか」ではなく、「何を手放すか、捨てるか」。無駄なものをどんどん
引いていき、本当に大事なものを見据える新しい生き方こそが「幸せ」につながる道
なのではないだろうか?

ということをコンセプトにできた映画です。
何だか絶望的な映画に感じますよね。そんなことはないんです。
希望はいつでも僕たちの心の中にあるんです。ただ、ヨクとカネとモノに溢れ、見つけにくく
なっているだけで。希望を見つけるきっかけになるような映画なんです。


映画は、これだけのコンセプトを2時間弱でまとめるには、ちょっと強引すぎるな。
という印象がありましたが、それでも、まったく無名な、宣伝もしない自主上映の映画に、
1000人以上の人が観に来て、涙していました。

僕がこの映画を知るきっかけは、これまた奇跡のような出会いがありました。
今までも何度か触れましたが、大晦日に何気に手に取った、『奇跡のリンゴ』で有名な
木村秋則さんの本。ただ漠然と、今考えている事の答えが書いてあるような気がして
読んだのですが、その時は答えを見つけられないまま、一気に読みふけって年が明けました。

その後、今家具を製作している『旅する木』の新ブランド、
化学物質を使わない家具作り、『心と体と木と暮らし』を立ち上げる準備をしている過程で、
様々な奇跡のような出会いから、『奇跡のリンゴ』と結びつき、そして先日、突然工房へ来られた
伊達さんという方、何と2年前まで木村秋則さんの秘書をされていたというから驚きました。
今、木村さんから北海道を託され、北海道の農業と、まち作りに奮闘されています。
伊達さん、なんと、当別を開拓した伊達邦直の直径の子孫に当たる方で、先祖のお墓も
ここ、東裏にあるのだそうです。
こんな事って、あるんですね〜。本当に不思議です。伊達さんは今、(株)ネイチャーズという
会社を立ち上げて、日々、自然農法の推進に奮闘しています。

今日観た映画、『降りてゆく生き方』は伊達さんに紹介して頂きました。
そして会場に行ってさらに驚いた事は、パンプレットの中に、ヘンプカーのチラシが
入っていました。

『ヘンプカー』、ご存知ですか?
麻(ヘンプ)を様々なことに有効利用することで、環境問題、経済問題を解決していこう。
という試みで、”ヘンプ”を多くの方に知ってもらうためのイベントとして、”ヘンプオイル”で
動く車、『ヘンプカー』で日本を縦断しながら、各地でイベントを行う。というプロジェクトです。

ヘンプカープロジェクトが当別でもイベントを行うという事で、先日、このプロジェクトの
実行委員の方が工房へ来られ、話しをしているうちに、ひらめいたんでしょう。
突然、「募金箱を作って下さい!ヘンプカーと一緒に日本中を旅する、”旅する募金箱”を。」
ということで製作したのがこれ
つい先日、発送したばかりでした。
そのチラシが会場に置いてあったのです。

不思議で面白いですねぇ。縁って。
点と点がつながって線になり、もう一つの点がつながって、面になり、さらにもう一つ加わると
立体になり、もっと幾つもつながると、球に近づく。
ものごとはそうやって転がり始めるのかな?なんて思います。

そして、僕が転がろうとしている方向は、やっぱり僕が転がりたいと思っている方向で、
まだまだ時は熟していないというか、球にはなっていないけれど、いつでも転がれる心の準備は
しておこう。っと、映画『降りてゆく生き方』を観て、思いました。


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6/16 ”浅はかですね〜

いや〜、時間が経つのって早いですね。
本当はそよ通、つむ通、いずれかを3日ペースで更新したいと思っています。
その間に”たびもっくんが今日も行く”を入れて…
な〜んて思っているのですが、全く出来てません。

ていうか、つむ通が毎回毎回、長過ぎ!
妻なんて、「あ〜、また長!」と言って最後まで読まず、素通り。
そりゃ無いぜ!
何時間かかってると思ってんのよ!

そうなんです。僕は上の欄に書いてあるように、学生の頃、シナリオライターに
なりたかったんですよね〜。本を読むのは好きじゃないんですが、文章を書くのは好き。
納得いく文章やフレーズが思い付くまで、ひたすら考えを巡らすので、いつも
2〜3時間くらいかかるんです。その間に眠くなっちゃって、二日にまたぐこともしばしば。
妻に呆れられながらも、納得出来ないんだもん。
僕にとっては結構大きな仕事の一つ。
文章を考えるのは好き。でも日記は嫌い。手紙も好きじゃない。ん〜?昔は好きだったかな〜。

僕と妻は、学生時代から付き合っていたのですが、ず〜っと遠距離でした。
学生時代、僕は新潟で、妻は東京。付き合ってすぐに僕はカナダへ放浪の旅。
帰国後妻は富良野。僕は長野で就職。などなど。
その頃はちょくちょく手紙を書いていた様な…。。
結婚式の時、僕の友達と妻が共謀。僕の出した手紙を皆さんの前で曝露。
なんて恥ずかしい思いもしたっけなぁ。
今はメールがあるから、手紙なんて書かないんでしょうね。

遠距離恋愛はいいですねぇ。
僕は今も昔もかなり身勝手な人間なので、週末はいつもカヤックをかついで激流を求め、
遊びに行っちゃう。(独立してからは全く行けていませんが…)
変に会える距離だと、「会いた〜い。」(妻は、こんな可愛い言い方は当時からしませんで
したが…)なんて言われると、会わなきゃいけない。
会えない距離だと、「いや〜、会いたいのは山々なんだけどねぇ。」と言って、川へGo!
遠距離だったから長続きしたんでしょうね。

おっと、文章の話し。
シナリオライターになりたかったですね〜。ほとんど大学には行かずにアルバイトしていて、
たまに受ける授業中、スクラップブックに向かって、空想の物語りふけっていました。
友達に見せると、「いいじゃん!」なんて褒められて、気分良くして「今回はいける!」
なんて意気揚々と新聞社のコンペなんかに出して、帰宅してアパートのドアを開ける時、
ポスト口をドキドキしながらチェック!

学生なので、恋愛ものが中心だったような。
上記の通りの生活をしている僕は、ドラマになるようなたいした恋愛経験などあるはずも無く、
多分つまんないものだったんでしょうね。
そんなのを褒めてくれた友達も、ほぼ毎日僕と飯食って、お酒飲んで、ギター弾いて
大声で歌って、隣に住んでいる教育学部音楽科のお姉さんに怒られて…。。
そんな生活をしていたもんだから、間違いなく、たいした恋愛経験などあろうはずも無く。
そんな友人に褒められて、有頂天になって「数年後には、倉本聰か、須田修司か!」なんて
夢をつまみに安〜いお酒を飲んで…。

あ〜、なんて若かりし、懐かしき、そして潤わしき日々。

いつもそうなのですが、つむ通を書き始める時、たいして先まで考えている訳ではありません。
何となく「こんなこと」って感じで書き始めるので、その後の展開は僕自身、全く予期せぬ
出来事で、今回もまさか学生時代の恥をさらけ出すことになろうとは…。

でもこんな些細なことがきっかけで、20年も前の若い自分と出会って、友達や、会話、お酒の味
なんかを思い出して、心が揺さぶられる。
懐かしいだけでなく、あの頃に戻りたいわけではなく、ただ、心に遠い昔感じた甘く切ない風が吹く。そんな感じに浸れるなんて、
人の心は深いなぁ。と感じます。

結局、ポスト口に歓喜の手紙が届く事は一度もありませんでしたね。
それでも懲りもせず、学ぶ事もせず、また似たような物語りを書き始めるんです。
浅はかですね〜。

人は、その深さで、時間と空想の世界を旅し、その浅さで、現実の世界を生きられるのでしょう。


先日、「つむじ風通信のファンなんです〜。」っと若い女性に言われました。
とっても嬉しくて、頑張ろう!と今回も結局、かなり長くなってしまいました。

浅はかですね〜…。。

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6/10 ”あの丘の向こうまで…”

北海道はとても気持ちの良い季節です。
毎朝工房は窓全開で風に吹かれながら仕事をしています。

このところ、北海道新聞の折り込み雑誌『オントナ』、北海道新聞、そして
先日の『どさんこワイド』と、立て続けにマスメディアに取り上げて頂き、
平日でも工房に多くのお客さんが来てくれます。

作業場の体育館や、ショールームを案内すると、皆さん、「ワ〜!素敵〜♪」と
感嘆の声をあげてくれて、中には、”家具作り”という仕事にとても興味を持ち、
羨ましがる方もいらっしゃります。

”家具作り”という仕事。今まで幾度となく、つむ通で触れてきました。
完成した家具の、その背景には…。。

本当はとても地味な作業の積み重ねで、ついうっかりしていると、
モノクロの世界に迷い込んでしまう。
しかも、工房の体育館には僕と山口君、そして今月限定で木工修行の
白木君。うさんくさい男3人だと、色気もあったもんじゃない。
「モノクロでいいや!」って思ってしまう。
だから、カフェで週末に向けてケーキ作りをしている妻がたまに
体育館に顔を出すと、以外と楽しくて、その時間だけパッと風景がカラーになる。
ついついこの色のついた風景に浸っていたくて、長話になってしまう。
それでも作業のことが気になって、
「さ、やりますか。」と言って作業に戻ります。

作っている家具が完成が近づくと、徐々に色がついて来て、そして
決定的に風景を鮮やかに彩ってくれるのは、お客様の笑顔と感謝の言葉。
「そう、この景色を見たかったんだ!」っていつも思う。

多分、いや、”多分”じゃなく、本当はとっくの昔から気付いているんだけど、
こんな事言うとまずいんじゃないかと思って、あまり大きな声で言えないのですが、
僕は正直言って、”木に触れてさえいれば幸せ。”とか、”心底、家具作りが好き!”
っていう訳ではないんですね。

だって、面倒くさいもん。地味だもん。コピー出来ないもん。木は言う事きかないもん。

おっと、思い切って口に出してしまうと堰を切ったように不平不満が出てきますねぇ。

でもじゃあ、どうして続けているのか、どうしていつも自分でデザインしながら、
難しい選択をあえて選んでしまうのか。

それはいつも、特にデザインを起こしている時、あの鮮やかに彩られた風景を思い、
求めてしまう。「もっと、もっと…」って。
難しい加工が上手くいった瞬間、ふっと色のつく風景。
塗装が終わって最終確認の時思い出す、苦労しながら加工していた時の風景。
お客さんに「ここが大変だったんですよ〜。」って説明した時、感動したり、
喜んでくれる色鮮やかな風景。

昔、よく美瑛の丘を自転車でサイクリングしました。
あの丘の向こうには、もっと素晴らしい風景が待ってるんじゃないか。って
たどり着くと、次のあの丘まで…。あの丘の向こうまで…。
って暗くなるまでペダルを踏み続けた、あの感じに似ている。

今、体育館のステージには、納品を待っている家具や、クラフト達が並んでいる。
家具も僕も、お客様に会うのが楽しみで仕方が無い。
そんな家具達を見ていると、いつもと変わらない変哲の無い日常に、鮮やかな彩りを
添えることができるのは、やっぱり家具作り、この道なんだと気付く。

うっかりしていると、ついモノクロの世界にのみ込まれそうになったりするけど、
きっと誰もがそうやって生きているんだろう。
些細な生き甲斐に彩りを見つけて、モノクロの世界に一つひとつ色を添えていく。
人生とはそんなものかも知れない。



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6/4 ”心を整える”

天候不順で遅れ気味だった東裏小学校の回りの田んぼには、ようやく田植えが終わって
礼儀正しそうに稲が並んでいます。
畑はトラクターできれいに馴らされています。トラクターでよくこんなに綺麗にまっすぐ
筋がつくように馴らせるもんだな。と毎年感心しています。
北海道は、とっても気持ちの良い日が続いています。

工房の体育館や、教室の換気口には、ムクドリが巣を作って、今、子育て真っ最中。
親鳥が必死になって餌を雛に運んでいます。
親鳥が巣に来ると、雛鳥達が一斉に「ピー、ピー、チー、チー」って可愛い鳴き声で
お出迎え。餌を与えるとすぐに飛び立って、また餌探し。休みなく運んでいる姿から、
必死さが伝わってきます。
なので、毎日野生
の鳥のさえずりを聞きながら仕事をしています。

校庭はタンポポの黄色いじゅうたん。少しずつ綿毛になったものもあって、なんだか幻想的。

こんな風に書くと、とても素晴らしい環境で、のんびりモノ作りに愛しんでる感じがしますね。
素晴らしい環境であることは間違いありません。ただ…。。

のんびりではありません。現在、とてもありがたいことに、抱え切れない程の家具のご注文と、
お問い合わせを頂いています。
僕と山口君は、土日も祝日も関係なく、必死になって仕事をこなしている。
というのが正直なところ。
昨年もそうだったのですが、今年も一年に何日休めるんでしょうねぇ。
ありがたいことです。ただ…。。

人間にはバイオリズムがあって、女性は分かりやすいと思いますが、実は男性にもあるらしく、
多分僕は今、テンションが低い時期かなぁ?
晴天の青空と、真黄色の校庭、鳥たちのさえずり、こんな素晴らしい環境で、忙しく仕事を
させてもらっているのに、ちょっと山口君が仕事でミスをしたら、すぐイライラしたり、
家族に不機嫌に当たったり…。出来てないですね、人間が。

お昼休み、外でお弁当を食べていると、
「何やってるんだろう、俺。この素晴らしい環境に感動もせず、早朝から深夜まで、
ただ必死に仕事をしている。お客様に”豊かさ”や、”安らぎ”を感じてもらいたい。
と思っているのに、自分がそんな風に感じられない。」なんて考えたりしています。

僕のすぐ真上に巣を作った親鳥が、餌を加えたまま、巣に入れずに向かいのアンテナに
停まって僕の様子を伺っています。

夜と早朝は毎日、デザインを起こしたり、図面を起こしたりする作業をしています。
でも、昨夜と今日の早朝は思い切ってパソコンに向かわず、ずっと前に買ったっきり
読む時間がなく、いつの間にかいろんなものの下に隠れていた、サッカー日本代表の
長谷部選手の『心を整える』という本を引っぱり出して読みました。

『心を整える』

今の僕にはとても大事な心得が書かれていました。
早朝、昼休み、就寝前、10分でいいから、静かに心を整える時間を持とうと思います。

さっきから僕の様子を伺って、気がきじゃなさそうに、向いのアンテナに停まっり、
ちょっと飛んだりしている親鳥。
「そんなに忙しなさそうにしてないで、君もちょっとくらい心を整えた方がいいよ。」
そんな僕の気持ちをよそに、親鳥はあっち行ったり、こっち行ったり、停まったり…。

わかった、わかった。どけばいいんでしょ。
僕がどいた瞬間に、その餌をくわえた親鳥は一目散に巣に入っていきました。
待ちわびた雛達が、一斉に「ピーピー、チーチー」
そしてすぐにまた、餌を探しに飛び立って行きました。

そんな風景をただぼんやり見ていました。
小さな命の必死の営みを、ただぼんやり見ていました。
流れて行く雲を、ただぼんやり見ていました。
頬を撫でる初夏の風が、タンポポの綿毛を運ぶのを、ただぼんやり見ていました。
遠くの方で畑を馴らしているトラクターをただぼんやり見ていました。

ただぼんやりにしては、いろんなものを見ているなぁ。と、ぼんやり思いました。
ただぼんやりって、以外に難しいなぁ。とぼんやり思いました。

んなことを思っていたら、さっきの親鳥が餌をくわえて帰ってきました。
また雛鳥たちは大喜びで、「ピーピー、チーチー」

よ〜し、午後からまた、ひと頑張りしますか!


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5/23 ”悲しいほど綺麗な月だった”

今日、一人の若者が北海道を去って行きました。
そう、一ヶ月ちょっと、旅する木で働いてくれた坂爪君。
残念ながら退社する事になりました。

彼が家具職人に向いていないかどうかは、まだ解りません。
ただ、相当の時間がかかると判断しました。
そして、『旅する木』には、そこまで時間をかけて育てる程、余裕のある会社ではない。
たった一人のお客様の信用を失った時点で、今まで積み上げて来た信用と信頼を
一瞬で亡くしてしまう。
今なら、「また遊びにおいで。」と笑って別れられる。
そう判断しました。

今どき、本当に稀に見る素直で心の優しい青年でした。
僕、個人としては、とても好感の持てる、好きなタイプの人間です。
ただ、『旅する木』のことを考えた時、自分はこんなにも非情になれるのかと、
自分が恐くなりました。

仕事の後、ショールームで彼に僕の思いを伝えたところ、今伝えられた現実を受け止めるべく、
「もうちょっとここにいていいですか?」と言ったので、「いいよ。」と言って、
僕は工房を出ました。
すぐに家に帰る気になれなかったので、毎朝お参りに行く東裏神社の階段に横になって、
暗くなった空を見ていました。
そこからは校庭の向こうに東裏小学校が見えます。
カーテンが締まってはいますが、明りがついているショールームも見えます。
僕の作った家具を見て今、何を考えているのだろう?

やがて明りが消えました。暗い廊下を歩いて、玄関の前に来て、毎日の旅する木の決まり事、
教室の方を向いて「ありがとうございました!」と礼をしているんだろう。

何日も眠れない夜を過ごして出した結論ですが、それでもこの答えが間違っていなかったか、
旅する木が大好きで、僕の役に立ちたいと来てくれた若者の人生を、こんなにも短期間で、
挫折させる結論を、そして、彼の人生を大きく左右する結論を僕が下してしまって良かった
のだろうか?
そんな後悔にも似た思いが込み上げてきました。

真っ暗になった小学校のシルエットをしばらく見ていた後も、すぐに家に帰らず、
防風林の向こうをわざとゆっくり散歩したのは、赤くなった目を家族に気付かれたくなかったから。

ぼんやり歩いている時、その夜の月がやけに綺麗で。
悲しいくらい綺麗な月だった。

彼が工房に来なくなってからも、たまに夕飯を食べにいったり、近くの温泉に行ったりしました。
ここ、旅する木で過ごした約2ヶ月。彼には何度も怒鳴りつけて、そして何度も何度も、
繰り返して伝えた事があります。
多分、すぐには解らないと思いますが、何年後か、何十年後かに、「そういうことだったのか。」
と気付いてくれる日が来てくれたら、その時、ここにいた日々が意味を持つのではないかと
期待しています。

頑張って。そして、ありがとう。

大して役に立たなかったと思っていたけれど、居なくなるとやっぱりポッカリと穴が空いたようで
淋しいものです。
多分、君が182センチの長身だったからかな…?



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5/17 ”気持ちいい〜”

毎朝、愛犬ノンノと散歩しながらお参りしている東裏小学校のすぐ横の東裏神社。
やっと桜が満開になりつつあります。
そうなんです。本州の方は、すっかり遠い昔の事と感じられていると思いますが、
北海道は今、桜の季節なんですよ。

先日、仕事をしていたら、ガラッと体育館のドアが開いて、二人の若者が入ってきました。
ポケットに手を突っ込んだまま、「カフェがあるって聞いたんだけど…」

こう見えて、僕は意外と職人気質というか、黙ってない方なので、この若者の態度に
「カチン!」

話しは反れますが、僕のこの性格による行為で、妻は付き合っている頃から何度
危ない目にあったことか。
ある時の名セリフ。
「死ぬなら一人で死んで!!」

カフェをオープンしてから、旅する木だけの時には絶対来なかったタイプのお客さんが
来る時があります。
僕は昔野球をやってた頃、ストライクは必ずバットを振って、監督に「カウントを考えろ!」
「状況を考えろ!」、「狙い玉を絞れ!」など、口が酸っぱくなる程言われたものです。
自分のストライクゾーンにズドーンと来られると、自分の意思とは無関係に反応してしまう。
もう”反射”なんです。
そうして妻に、
「さっきの態度、あれはないんじゃない?」
「え〜?精一杯我慢してたんだけど…」
「もう、態度に出まくりだから。カフェのお客さんには絶対止めて。せっかく来てくれたんだから
とにかく気持ちよく帰ってもらいたい!」
と今まで何度か言われていました。

今回もそのことを思い出して、精一杯我慢して、
「すみません、カフェは週末だけなんです。」
体育館を見回して、「ここは何なの?」
「この体育館で家具を作ってるんです。」
「家具?」
「家具工房なんです。良かったらショールームもあるのでご覧になりますか?」

と言って先ず、カフェを案内。
「今日は休みなんですけど、週末はここでカフェをしているんです。」
とドアを開けた瞬間。。
二人とも大声で
「お〜!!すっげ〜!これ全部作ったんですか?」
「そうなんです。全部。」
「すっげ〜。このキッチンもですか?」
「そうです。」
「マジ、すげ〜?」

僕も彼らの第一印象をすっかり忘れて、いろいろ説明。

続いてショールームを案内すると、
「お〜!カッケ〜(カッコイイ)、すげ〜、カッケ〜(カッコイイ)!!」
一つひとつ家具に座ったり、触ったりする度に
「オ〜!」「ワ〜!」「超〜すっげ〜!」「カッケ〜!」を連発。

「どうぞ、ゆっくりしていって下さい。」と体育館に戻って仕事をしていました。
それからしばら〜く時間が経っていましたね。こっちに来ずに帰ったんだなぁ。
と思っていたら、ノックして体育館に入って来て、
「すごい楽しかったです。ありがとうございました。」
と、二人揃って、深々と頭を下げていました。もちろん、両手はポケットから出して
指先までピシッと伸びていました。

それはまるで別人のよう。
「今度は是非カフェに来て下さい。男二人じゃなく、彼女を連れてゆっくりしていって下さい。」
なんて余計な一言も。

彼らが帰った後、「とにかく気持ちよく帰ってもらいたい。」という妻の言葉を思い出しました。
でも、一番気持ちよくしてもらったのは、紛れもない、僕でした。


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5/10 ”デザインについて語ったら大変なことになった!”

  

カフェがオープンして、毎週末、たくさんのお客様が工房へ来てくれます。
妻は来てくれたお客さんに満足してもらえるよう、全力投球で頑張っています。
なので、夕方になって最後のお客さんを見送ると、もうヘトヘトです。
僕も週末はカフェのお手伝いをしているのですが、たまに抜け出して
ショールームへ行って、家具を見ているお客さんに説明したり、雑談したり…。
多くのお客さんから、「落ち着くデザインですね。」とか、「さり気ないポイントが
可愛いですね〜。」なんて声を頂き、嬉しくなります。

その中で、一番人気というか、お客さんが喜んだり、驚いたりしてくれるのが、
音の出る家具。引き出しの開閉で音が鳴るんですね〜。
泥棒が入った時、「この引き出し、怪しいなぁ。」と開けたところ、「プ〜♪」
なんて音がなったらビックリしますよね。色んな引き出しを開閉する度に、「プ〜♪」だの
「ピ〜♪」など鳴ったら、
もう、他の引き出しを開けられなくなります。
泥棒に入られない最大の方法は、頑丈な鍵を付けたり、防犯カメラをしかけたり、そんな
ことよりも、近所付き合いを親密にする。そんな考え方の家具なんです。
それでいて、毎日使う時には、楽しい家具。お客さんが来た時には、感嘆の家具♪。
毎日の生活を豊かにしてくれる家具。
そういうものを”デザイン”と呼びたい。

以前、つむ通でも触れたかと思いますが、僕が家具の世界に足を踏み込もう!と決心する
衝撃を与えてくれたのが、シェーカーの家具と、その暮らしなんです。
文明を排除し、質素で静穏なシェーカー教団の暮らし、その暮らしをベースにした
シェーカー家具。
「審美性は有用性に宿る」という教えのままに、一切の装飾を排除したその家具の美しさには、
そこに暮らすアーミッシュの人々の生活と精神が写し出されているのです。

”デザイン”というと、見た目の姿・形にとらわれがちですが、それは化粧された表面的な
もので、そこを目的に生まれたものには、深さがない。それは”デザイン”ではなく、
”ファッション”なんです。

その背景にその形になった理由、思いや思想、さらには生活から生み出されたものであるならば、
そのモノから、増々深淵の輝き、人の心を捕らえて離さない魅力を感じるんだと思います。
そういうものを”デザイン”と呼びたい。

シェーカーの椅子に話しを戻しますね。
後ろ脚の上端のロウソクの炎のような形の部分。
アーミッシュの人々は掃除の時、椅子を壁に掛けるんです。その時の持ち手にしっくりくるような
形なんです。
この「フィニアル」と呼ばれる部分の形状は、職人や集落によって微妙に異なります。
装飾を排除しよう、自己を封じ込めようと願いつつ、どうしても消せない人間の掲示欲のような
ものをそこから感じ、余計にホッとするというか、安心感を感じます。
これもやはり、”デザイン”と呼びたい。

『旅する木』が生み出す家具の中に、僕の思想や、理念、ここでの家族の暮らし、家具が生み出される
木造の小学校の体育館、冬の厳しさ、薪ストーブの暖かさ、春、やって来る白鳥の群れ、初夏、校庭
一面に咲くタンポポやデイジーの花々、秋の収穫物の瑞々しさ、そんなものを感じてほしい。
だから僕はいつも思っています。『旅する木』は家具を買ってもらっているんじゃなくて、
『旅する木』の物語りを買ってもらっているんだ、って。

「楠木正成は一行の詩も作らなかったが、かれの人生はそのまま比類のない大詩編では ないか」
(吉田松陰)『龍馬が行く』より

僕は歴史の表舞台を駆け回る英雄より、楠木正成や、真田幸村の生き方にとても魅かれます。
圧倒的な力を持つ相手に、自分のやり方を貫きつつ、真っ向からぶつかっていく彼らの人生を
かけた物語りに。

全く行き当たりばったりに”デザイン”について考えた時、とうとうこんなところに行き着いて
しまいました。いよいよ収集つかなくなってきた。
やばい、もうこんな時間!何とか収集つけなければ、寝られない…。。

つまりは、その人の生き方から溢れ出るものが形になった時、それこそが”デザイン”であると
僕は思うのです。一流のデザイン、一流のものを作るには、一流の思想を持って、大きな目標に
堂々と向かう姿、そういう生き方をしなければならないんだと。
それでいて、シェーカーの家具にも、楠木正成にも、真田幸村にも、何かホッとするような人間
臭さがあり、そこに多くの人が魅了され、虜になるんでしょう。

そんな生き方をしたいんだ!
そんなデザインをしたいんだ!
そんな家具を作りたいんだ!
僕は。

あ〜、何とか収集ついて良かった。ホッとした〜。
一時はどうなるかと思った。それじゃあもう寝ようっと。
おっと、ちょうど深夜一時だ…。。

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